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出産後、何もする気が起こらない、突然涙が出るなど、情緒が不安定になる妊産婦は少なくない。「うつ病などの精神疾患とは異なり、一時的なものですが、長引く場合は出産した医療機関の産婦人科医などに相談してください」と大阪母子医療センター(大阪府和泉市)の光田信明副院長は話す。
遠慮せず、周囲の人に相談して
▽重圧と孤独感
出産後のお母さんには、漠然とした不安、気分の浮き沈み、常に心配事があると感じる、眠れない、周囲の言動に一喜一憂する、理由もなく涙が出る―などさまざまな症状が表れることがある。光田副院長は「産後1年ほどは慣れない子育てにより、メンタルヘルスの不調を訴える妊産婦が10~15%ほどいますし、決して珍しいわけでありません」としつつ、「ただし、そのまま産後うつに移行する可能性や、自殺、子どもへの虐待につながる危険は否定できません」と警鐘を鳴らす。
「背景には、良い母親にならなければ、仕事もしなければ、みんなはできているのに、というプレッシャーを自分に課していることがあります。加えて、頼る人がいない孤独感があります」と説明するのは、同センターの和田聡子看護師長だ。特に、出産前から夫婦間の問題や家計の心配などが存在する場合、出産を機に表面化することが多く、育児などで気持ちに余裕がないと対応できなくなってしまうのだという。
▽相談できる環境づくりを
メンタルヘルスの不調が疑われる場合は、簡単な問診票で評価する。国内外で広く使われている「エジンバラ産後うつ病質問票」は「することが多く大変だった」「不幸せなので泣けてきた」などの10項目から成る。評価後、必要であれば精神科でカウンセリングを受ける。
自治体によっては、産後ケア入院に助成金制度を設けているところがある。実家が遠く両親に頼れない、夫の仕事が忙しいなど、仕事・家事・育児の全てを1人でこなす「ワンオペ(レーション)育児」になっている母親などが、医療施設に数日宿泊して助産師などに子どもの世話を手伝ってもらいながら、心身のケアを受けられる制度だ。悩みを共有したり、相談したりして、気持ちを落ち着かせることができるという。
「産婦人科医、小児科医や保健師などに遠慮なく相談することが大切です。また、親や夫、友達など周囲の人は、妊産婦が1人で悩まないよう、話をしやすい環境を作ってください」と光田副院長はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/11/20 07:00)
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