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乳児をおんぶや抱っこしたまま自転車に乗って転倒すると、思わぬ大事故につながる危険がある。子どもが死亡したケースも報告されている。事故による子どもの傷害予防に取り組むNPO法人Safe Kids Japanの理事長で、緑園こどもクリニック(横浜市)院長の山中龍宏医師は、「乳児はヘルメットをかぶることができず、おんぶや抱っこをされた高い位置から転倒すると、重い頭部外傷を負いやすくなります。自転車以外の移動手段を考える必要があります」と警鐘を鳴らす。
乳児をおんぶや抱っこして自転車に乗るのは大きな危険が伴う
▽死亡や後遺症も
2016年5月、東京都内で実際に死亡事故が発生した。生後7カ月の乳児をおんぶして自転車に乗っていた母親が、道路を横断中に反対車線から来た車と接触し転倒。子どもが母親の下敷きになって死亡したのだ。
事故を知った山中医師は、救急対応した東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)の医師と共に、過去にあった同様の事故について調査した。その結果、14年4月からの2年間に、抱っこやおんぶをされて自転車事故に遭い、頭部や顔面に外傷を負って同センターを受診した1歳未満児は8人。そのうち2人は入院して集中治療を行ったが、上半身にまひが残ったという。
さらに、おんぶや抱っこをされた状態で自転車が転倒した場合の、乳児にかかる衝撃の度合いを検証した。ダミー人形を使って、6カ月の赤ちゃんをおんぶや抱っこで自転車に乗せて転倒させるという実験を行い、赤ちゃんの頭部にかかる衝撃の強さを計測したところ、おんぶなどで転倒した場合の衝撃は、頭部傷害を起こす強度の7~17倍に相当することが分かった。
▽他の移動手段の模索を
子どもをおんぶや抱っこして自転車に乗ると危ないと分かっていても、他の移動手段がなければやめるのは難しい。山中理事長が昨年、未就学児を乗せた自転車の使用実態について約300人を対象に調査した結果、かなりの人が保育園の送迎や買い物などで日常的に行っていた。抱っこやおんぶをして乗っている人も約8%に上ることが分かった。
山中理事長は「子どもを亡くせば、親は悔やんでも悔やみきれません。ケガや後遺症のためにリハビリが必要になれば、社会的損失にもつながります。地域でバスを出す、タクシー券を支給するなどの支援策や、子どもを低い位置に乗せられる自転車の開発などを考えていく必要があるでしょう。子どもをリスクにさらさないでください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/01/06 07:00)
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