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米男子ゴルフのフェニックス・オープンで、アーノルド・パーマー以来となる大会史上2人目の3連覇を狙った松山英樹選手が、左手親指を痛めて2日目のスタート前に棄権しました。
「プレーしてだめなら納得いくが、プレーできないのはつらい」と語った松山選手。どんなにか無念だったろうと想像します。私はゴルフをしませんし、普段は興味もないのですが、報道を通じて松山選手のコメントを聞き、心療内科医の立場から、松山選手の決断を「さすが」と感じました。
「無理したらできるかもしれないけど、やってしまったら一生ゴルフができないんじゃないかという怖さはある。やめた方が賢明かなと。3連覇が懸かっていたが、それ以上に痛みが勝った」
プレ―したい、周りの期待に応えたいという自分自身の感情の一方で、プレーを続けたら体が壊れる、もうゴルフができなくなるかもしれない、という客観的な視点。その葛藤の中で冷静に判断を下したのだと思います。これこそがプロの決断なのでしょう。
そこで思い出したのは、2017年、日本人としては19年ぶりに横綱に昇進した稀勢の里関です。17年春場所は、13日目の日馬富士戦で負傷しながら、その後も強行出場して逆転優勝を遂げ、大フィーバーを巻き起こしました。
けがをしても試合を投げ出さずに頑張ったことが感動を呼んだことは間違いありません。ただ、私はその状況を見ながら、稀勢の里関は「もうこれで相撲をやめてもいい」と思っているのだろうかと考えたりしました。
負傷した稀勢の里関がなぜあれだけの力を出せたのでしょうか。その背景にはいわゆる緊急事態に陥ったときに、人間が発揮する底力と関わりがあると思われます。「火事場のばか力」という言葉がありますが、これは非常事態になると思いがけない力が出るというもので、医学的にも正しいのです。
人間が普段出す筋力は脳でコントロールされていてブレーキが掛けられています。というのも、普段から最大限に筋力を使うと体が壊れてしまうからで、最大筋力は緊急時にだけ出せるように制御されているのです。
(2018/02/13 11:03)
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