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第14回 松山英樹と稀勢の里、それぞれの基準
インフルエンザ大流行に通じる「心理」

 稀勢の里関は、敬愛する先代の鳴戸親方(元横綱・隆の里)から、「体が痛いからといって休場するのは相撲道に反する」「横綱や大関なら来てくださるお客さまのために、けがをしていても土俵に上がれ」などと言われていたといいます。

 けがをしても土俵に上がり相撲を取るのが力士、そして横綱の使命。稀勢の里は追い詰められ、その緊急事態に直面して最大筋力を出すように脳の状況が変わったのだと推察されます。「けがをおしても勝負する。その後どうなるかは二の次」という心理と、それを潔いとする思考回路が働いたと感じられます。

 これは松山選手が「いまプレーを続けたら一生ゴルフができないかもしれない」と感じて、試合を棄権した客観的な姿勢とは全く異なります。3連覇を懸けて自分を追い込んで試合をするのではなく、これからの自分の選手生命に視点を置いた選択です。

 松山選手と稀勢の里関、どちらが良いか悪いかということではありません。何を自分の基準にするかということなのでしょう。

 日本では「けがや病気をおして何かする」ことを、美しいとする考え方が強いように思います。最近のインフルエンザの大流行も、少し熱が出ても職場に行こうとする労働者の心理が背景にあるのではないでしょうか。

 ある企業で、38度の熱が出て医務室に来た男性を調べたらインフルエンザと判明。すぐ帰宅するように促した看護師さんに対して、その男性は「自分はこのくらいの熱はどうということない、インフルエンザ治療薬と鎮痛剤をくれたらこのままもう少し仕事する」と言い出したという話を聞いたことがあります。

 「けがや病気をしても休まずに頑張る」という心理は、さまざまな弊害を引き起こすことがあります。こういうことを話すと、「頑張らないでどうするんだ」と反論されそうですが、限界以上に頑張るのはおやめください。感情的にならず、冷静に客観的に自分の体調を判断してほしい、と願うばかりです。

(文 海原純子)
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