研究・論文

物忘れ以外のサインが重要
レビー小体型認知症

 認知症と言えば、物忘れなどの認知機能障害が頭に浮かぶ。しかし、認知症にはいくつか種類があり、発症当初は認知機能障害を伴わないものもある。そうした認知症の一つである「レビー小体型認知症」を発見した横浜市立大学(横浜市)医学部の小阪憲司名誉教授に話を聞いた。

 ▽幻視やこわばり

 レビー小体型認知症と、神経細胞にできた特殊なタンパク質である「レビー小体」が、思考をつかさどる大脳皮質や、呼吸や血液の循環に関わる脳幹に多く集まり、神経細胞を壊してしまうことで発症する。

 初期には、実際にないものが見える「幻視」を起こすことが多い。うつ症状の他、筋肉のこわばりや動作が遅くなるといったパーキンソン病のような症状が表れるのも特徴だ。

 小阪名誉教授は「物忘れなどの認知機能障害から始まることは少ないため、誤診されるケースが多くあります。他の病気と同様、早期発見、早期治療が重要ですが、認知機能だけに焦点を当てていると病気を見逃しかねません」と指摘する。

 ▽生活の見直しを

 日本で発見された病気であるだけに治療の研究も進んでいる。2014年には、世界に先駆けて「アリセプト(ドネペジル)」というアルツハイマー型認知症に使う薬がレビー小体型の治療にも使えるようになった。ただし、認知機能障害が出てから治療を始めても、既に病気は進行しているため、症状の改善は難しいという。

 「認知症には幻視やうつ症状、運動機能障害など、物忘れ以外にもさまざまなサインがあると知っておくことが早期発見につながります。認知症は人ごとではなく、家族や自分自身を含め、誰もがなり得る病気と捉えることも大切です」と小阪名誉教授は強調する。

 認知症は、精神科や神経内科を受診するのが一般的だが、すべての医師がレビー小体型認知症を的確に診断するのは難しいという。小阪名誉教授は「受診の際は、レビー小体型認知症の専門医師の一覧を参考にしてほしい」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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