治療・予防

高齢者の食べこぼし
他の病気が潜んでいることも

 高齢の親と久しぶりに食事を共にしたら食べこぼしが気になった、という経験はないだろうか。本人が気付いていれば心配はないが、気付かずによだれがだらだらと出ているようであれば、認知症パーキンソン病が潜んでいる可能性もあるので注意が必要だ。

高齢の親との食事で、気になることがあれば受診を

 ▽舌や唇の衰え

 食べこぼしの主な原因は、加齢により唇の機能が低下して、しっかりと口を閉じられなくなることだ。舌の働きが不十分で、食べ物を口の中にとどめられない場合もある。

 「舌や唇、あごなどを上手に動かしてはっきりと話す滑舌(かつぜつ)が高齢になると徐々に悪くなっていくように、唇と舌の機能も老化により少しずつ衰えていきます」と近畿大学医学部(大阪府大阪狭山市)内科学講座神経内科部門寄付講座教授の中村雄作医師は話す。

 ▽心配あれば神経内科へ

 高齢になれば、少々の食べこぼしは誰にでも起こり得る。では、どのような食べこぼしに注意が必要なのか。一つは、よだれが一緒にあふれ出るような場合だ。唾液は、普通は無意識に飲み込んでいるが、例えばパーキンソン病では、手だけでなく口や喉もうまく動かすことができなくなり、飲み込む動きが少なくなる。そのため、口の中に唾液がたまり、よだれがあふれてしまうのだ。

 また、認知症でも食べこぼしが表れることがある。食べ物をかんでいる最中に食事に対する意欲が低下し、かむ気力を失ってしまう。中村医師は「30分以上、口の中に食べ物を入れたままの人もいます。誤嚥(ごえん)をしてもむせることが少ないので、周囲も気付かないうちに肺炎を起こしているケースがあります」と指摘する。

 老化による自然な衰えに加え、パーキンソン病による機能の低下や認知症特有の症状が重なると、食べ物を喉に詰まらせたり、誤嚥性の肺炎を起こしやすくなったりする。高齢者の肺炎は命に関わる。家庭だけでなく高齢者施設などでも、注意深く見守る必要があるという。

 中村医師は「急に食べこぼしの頻度が増えた、本人は気付いていない、手が震えているなど、気になることがあれば、ためらわずに神経内科を受診してほしい」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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