小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」配合サプリメントを巡り、摂取との関連が疑われる死亡者は3日までに5人確認され、国が原因究明を進めている。サプリからは青カビ由来の天然化合物「プベルル酸」が確認されたが、腎臓を含めた人体への影響は明らかになっていない。原因物質の可能性もある一方、動物実験などを含めた調査には数カ月を要するとの見方もある。
 厚生労働省などによると、プベルル酸は1930年代に発見された。抗生物質としての特徴があるものの、毒性は非常に強い。抗マラリア薬の研究を進める北里大のチームが2017年、マウスに一定量を皮下注射したところ、3日目までに5匹中4匹が死んだと論文で報告した。
 食の安全に詳しい唐木英明東京大名誉教授(薬理学・毒性学)は、プベルル酸の研究は極めて少なく、人体への影響も現時点では不明だと指摘。一方、「青カビ由来の物質なら、紅麹がプベルル酸を作る可能性は限りなくゼロ。製造工程にカビが入り込む状況はなかったのか、衛生管理の解明もポイントになる」と話す。動物実験などを踏まえると、国立医薬品食品衛生研究所の解析は2~3カ月を要するとの見通しも示した。
 日本大医学部付属板橋病院(東京都板橋区)には昨年12月~今年2月、尿の泡立ちや食欲不振を訴える50~70代の女性3人が1週間から数週間ほど入院した。同病院によると、3人とも「尿細管間質性腎炎」と診断されたという。
 尿細管症状は、薬の副作用によることが多い。3人は既往症がなく薬も飲んでいなかったが、いずれもサプリ「紅麹コレステヘルプ」を服用していた。
 同病院は2月1日、小林製薬に問い合わせた。当初は「同様の報告はない」との回答だったが、同22日には担当者が「事情を聞きたい」と来院し、経過などを伝えたという。
 同病院の阿部雅紀医師は「腎臓の病気は自覚症状が乏しい。不安な人は一度、医療機関を受診してほしい」と呼び掛けている。 (C)時事通信社