能登半島地震の被災地に設けられた避難所で、新型コロナウイルスなどの感染が相次いでいる。断水で衛生環境が悪化した避難所では呼吸器感染症や胃腸炎がまん延する恐れがあり、識者は「体調が悪いと感じたら我慢せず、避難所の管理者に申し出てほしい」と話す。
 石川県などによると、8日までに輪島市と穴水町の避難所で、新型コロナやノロウイルスの感染者が複数確認された。感染症の疑いがある避難者には、災害派遣医療チーム(DMAT)などが対応に当たっているという。
 県内では、珠洲市や輪島市などで断水が続く。寒さは厳しさを増し、過密状態の避難所は衛生面での懸念も大きい。
 一時約800人が避難していた珠洲市飯田町の小学校では消毒液を常備し、校内放送で1日3回の換気の呼び掛けや、靴の履き替えなどを徹底している。約60人が身を寄せる輪島市河井町の避難所でも換気扇を常に作動させ、マスク着用を求めているという。運営に当たる市職員の泉俊弘さんは(32)は「コロナやインフルの陽性者は出ていない」と話す。
 一方で、断水のため手洗いができなかったり、仮設トイレの設置が追い付かなかったりする問題も生じている。ある避難所の女性(43)は「体調を崩す人もいるが、我慢している人も多い。自分の身は自分で守るしかない」と声を落とす。
 東京医療保健大大学院の菅原えりさ教授(感染制御学)は「厳しい状況だが、できる限り手洗いや換気をしてほしい。体調が悪ければすぐ申し出て、せきが出るならマスクの着用を心掛けて」と話している。 (C)時事通信社