能登半島地震では、避難生活の長期化で命を落とす「災害関連死」の増加が懸念されている。石川県内では31日までに15人の関連死が確認されており、現地では被災者の健康悪化を食い止める取り組みが続く。専門家は「1カ月が経過した後も多く起こり得る」と注意を呼び掛ける。
 輪島市の指定避難所「ふれあい健康センター」には、1月31日時点で支援を必要とする50~90代の要介護者14人が避難。同4日から支援に入った医療従事者でつくるNPO法人「TMAT」によると、地震直後は家族連れやペット同伴の被災者などで密集し、要介護者のサポートは困難を極めた。新型コロナウイルスの集団感染も起き、数人が別の病院で入院した。
 支援に必要な歩行器やつえなどが不足しており、被災前は自宅で歩けていた要介護者の身体機能が低下。一時寝たきりに近い状態にまで悪化した。現在は回復傾向にあるといい、理学療法士の泉弦輝さんは「介護度の高い人は誤嚥(ごえん)性肺炎や床ずれのリスクがある。少しでも前の状態に近づけたい」と力を込める。
 2次避難は少しずつ進んでいるというが、泉さんは「次の避難先に歩行器がないなどの理由で身体機能が落ちることを心配している。同じような支援が受けられるようにしてほしい」と訴えた。
 関西大の奥村与志弘教授(総合防災・減災)は、避難生活の長期化により、高齢者は食欲や体力が減退して弱ることがあると指摘。「避難所では家事など身の回りのことをする必要がなくなり、結果的に活動量が低下してしまう。意識的に体を動かすことが大事だ」と話す。
 災害関連死は高齢者の場合、呼吸器系の疾患が死因となることが多いとし、支援に入る人に対し、感染対策の徹底も呼び掛けた。
 2次避難については、「スピード感をもって進めるべきだが、避難したら全て解決というわけではない」と指摘。「孤立防止や必要なサポートを受けられるようにし、2次避難で状況が好転するよう個別に被災者のフォローをしていく必要がある」と述べた。 (C)時事通信社