一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏
(第1回)
にわか仕立ての名前「和雄」
つらい入院、夢のきっかけに
「家族、親類、友人が皆、母のおなかの形から、女の子だと言って楽しみにしていたそうです。しかし僕を取り上げた産科の先生が、残念そうな顔で『奥さん、付いてましたわ』と言ったそうです」。両親は女の子の名前しか考えておらず、母親の誕生日と同じ日に生まれたため、とりあえず父親の利雄、母親の和子から一文字ずつを取ったにわか仕立てで和雄になった。
父親は浜松高等工業学校(現・静岡大学工学部)を卒業後、エンジニア一筋で典型的な昔かたぎの人。家庭をほとんど顧みない夫に対し、母親は教育熱心で、兄弟は大阪学芸大学(現・大阪教育大学)の付属幼稚園から高校まで一貫校に通った。
母親は三角氏の小学校時代からの勉強ノート、作文、絵画などをファイルに整理して保存していた。小学6年の理科の勉強ノートには、学校で習う範囲をはるかに超えた心臓と血管の仕組みが硬筆のお手本のような美しい文字とイラストで描かれている。表彰された絵画もしわ一つない完璧な形で残っている。
「基本的に母は捨てられない性格で、取っておくのが趣味だったんですよ」と三角氏は謙遜するが、将来、世の中に公表することを予見していたのかもしれない。
(2018/01/16 10:00)
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