経口糖尿病薬など
血糖降下薬は、インスリン分泌促進作用をもつものと、インスリン分泌促進作用をもたないもの(膵〈すい〉外作用が主作用)に大きく2つに分けられます。前者は、血糖依存性のものと血糖非依存性のものに分かれます。
●インスリン分泌非促進薬には、以下の4種類があります。
①ビグアナイド薬はさまざまな膵外作用によって血糖低下作用を示すものです。肥満している2型糖尿病患者の第1選択薬として使われています。副作用として乳酸アシドーシスが有名ですが、きわめてまれであり、いっぽう吐き気、下痢の症状がしばしばみられます。ほかの疾患があると服用できないことがあります。
②チアゾリジン薬は、インスリンの作用を強めることによって血糖低下作用を示すものです。この薬はインスリン抵抗性が強い2型糖尿病に効果を示すことが多く、肥満している人にしばしば使われます。副作用として、浮腫、心不全、肝障害などが報告されており、体重増加をきたしやすい点も問題となります。
③α(アルファ)-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は、糖質の吸収を阻害することによって食後の高血糖を改善する薬です。空腹時血糖値はあまり高くないものの、食後の高血糖がみられる軽症の糖尿病患者に単独で投与されることが多く、また、SU薬やインスリン治療とも併用されます。毎食直前に服用することが効果を発揮するには大切です。副作用では、放屁や腹部膨満(ぼうまん)、便秘、下痢などの腹部症状がしばしばみられます。
④SGLT2阻害薬は比較的に新しく販売された経口糖尿病薬です。尿糖排泄を促進して血糖低下を起こすもので、体重減少効果が期待されます。単独服用では低血糖を起こしにくい薬です。心、腎の保護効果、心不全の抑制効果があきらかになり、非糖尿病者でも使用可能となり始めました。
●インスリン分泌促進薬の血糖依存性の部類には以下の3つがあります。
①DPP-4阻害薬は食後の血糖依存的に血糖値を下げるため、単独服用では低血糖を起こしにくく、また体重増加をきたしにくいため、よく使用されます。腸でつくられるGLP-1というホルモンは膵臓からのインスリン分泌を促進させる作用がありますが、GLP-1は分泌されてもすぐ分解されてしまいます。そこでこの分解を阻害する薬がつくられました。SU薬と併用する場合、低血糖に注意します。本薬の使用は膵臓がインスリンを分泌する能力がまだ残っていることが前提のため、1型糖尿病のインスリン治療の代わりにはなりません。
②GLP-1受容体作動薬は、DPP-4阻害薬の注射版としてまず登場し、いまは経口薬も登場しました。食後の血糖依存的に血糖値を下げます。GLP-1は分泌されるとすぐ分解されてしまうので、GLP-1受容体に結合して作用を発揮するが分解されにくい薬がつくられました。血糖値の上昇を抑えることができるようになりました。本薬は、血糖値の上昇を抑える作用とともに、食欲を抑える作用や体重を低下させる作用もあります。
本薬も膵臓がインスリンを分泌する能力がまだ残っていることが前提のため、1型糖尿病のインスリン治療の代わりにはなりません。最近、心、腎の保護降下作用がいわれています。
③イメグリミンは、2021年9月に発売されたもっとも新しい糖尿病ののみ薬です。今のところ(2022年12月)発売しているのが1社のみです。構造はビグアナイド薬のメトホルミンによく似ていますが、血糖の濃度に依存したインスリン分泌促進作用をもつこと、メトホルミンの副作用として起こりうる乳酸アシドーシスを起こしにくいことが異なるとされています。イメグリミンの薬効は、上述の血糖依存性インスリン分泌促進作用とともに、インスリン抵抗性改善作用もあります。副作用のおもなものは、胃腸障害(悪心、便秘、下痢)です。
●インスリン分泌促進薬の血糖非依存性の部類には以下の2つがあります。
①スルホニル尿素(SU)薬は代表的な経口糖尿病薬です。膵臓のβ(ベータ)細胞膜の表面に存在しているSU薬の受容体に結合することによって、インスリンの分泌を促進します。SU薬は短時間で血糖降下作用を発揮しその効力が強い薬物です。副作用として低血糖に注意です。
②速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)はSU薬ではありませんが、SU受容体に結合し、インスリン分泌を促進する薬剤です。吸収が速く作用時間も短いことが特徴であり、毎食直前に服用しなければなりません。副作用としては、低血糖に注意します。
これらの糖尿病薬は、食事療法や運動療法の実践が前提となって効果を発揮するものであり、食事療法に代わるものではありません。また、1型糖尿病やインスリン注射をおこなわなければいけない状態の場合には、インスリン治療です。
(執筆・監修:東京女子医科大学附属足立医療センター 病院長/東京女子医科大学 特任教授 内潟 安子)
●インスリン分泌非促進薬には、以下の4種類があります。
①ビグアナイド薬はさまざまな膵外作用によって血糖低下作用を示すものです。肥満している2型糖尿病患者の第1選択薬として使われています。副作用として乳酸アシドーシスが有名ですが、きわめてまれであり、いっぽう吐き気、下痢の症状がしばしばみられます。ほかの疾患があると服用できないことがあります。
②チアゾリジン薬は、インスリンの作用を強めることによって血糖低下作用を示すものです。この薬はインスリン抵抗性が強い2型糖尿病に効果を示すことが多く、肥満している人にしばしば使われます。副作用として、浮腫、心不全、肝障害などが報告されており、体重増加をきたしやすい点も問題となります。
③α(アルファ)-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は、糖質の吸収を阻害することによって食後の高血糖を改善する薬です。空腹時血糖値はあまり高くないものの、食後の高血糖がみられる軽症の糖尿病患者に単独で投与されることが多く、また、SU薬やインスリン治療とも併用されます。毎食直前に服用することが効果を発揮するには大切です。副作用では、放屁や腹部膨満(ぼうまん)、便秘、下痢などの腹部症状がしばしばみられます。
④SGLT2阻害薬は比較的に新しく販売された経口糖尿病薬です。尿糖排泄を促進して血糖低下を起こすもので、体重減少効果が期待されます。単独服用では低血糖を起こしにくい薬です。心、腎の保護効果、心不全の抑制効果があきらかになり、非糖尿病者でも使用可能となり始めました。
●インスリン分泌促進薬の血糖依存性の部類には以下の3つがあります。
①DPP-4阻害薬は食後の血糖依存的に血糖値を下げるため、単独服用では低血糖を起こしにくく、また体重増加をきたしにくいため、よく使用されます。腸でつくられるGLP-1というホルモンは膵臓からのインスリン分泌を促進させる作用がありますが、GLP-1は分泌されてもすぐ分解されてしまいます。そこでこの分解を阻害する薬がつくられました。SU薬と併用する場合、低血糖に注意します。本薬の使用は膵臓がインスリンを分泌する能力がまだ残っていることが前提のため、1型糖尿病のインスリン治療の代わりにはなりません。
②GLP-1受容体作動薬は、DPP-4阻害薬の注射版としてまず登場し、いまは経口薬も登場しました。食後の血糖依存的に血糖値を下げます。GLP-1は分泌されるとすぐ分解されてしまうので、GLP-1受容体に結合して作用を発揮するが分解されにくい薬がつくられました。血糖値の上昇を抑えることができるようになりました。本薬は、血糖値の上昇を抑える作用とともに、食欲を抑える作用や体重を低下させる作用もあります。
本薬も膵臓がインスリンを分泌する能力がまだ残っていることが前提のため、1型糖尿病のインスリン治療の代わりにはなりません。最近、心、腎の保護降下作用がいわれています。
③イメグリミンは、2021年9月に発売されたもっとも新しい糖尿病ののみ薬です。今のところ(2022年12月)発売しているのが1社のみです。構造はビグアナイド薬のメトホルミンによく似ていますが、血糖の濃度に依存したインスリン分泌促進作用をもつこと、メトホルミンの副作用として起こりうる乳酸アシドーシスを起こしにくいことが異なるとされています。イメグリミンの薬効は、上述の血糖依存性インスリン分泌促進作用とともに、インスリン抵抗性改善作用もあります。副作用のおもなものは、胃腸障害(悪心、便秘、下痢)です。
●インスリン分泌促進薬の血糖非依存性の部類には以下の2つがあります。
①スルホニル尿素(SU)薬は代表的な経口糖尿病薬です。膵臓のβ(ベータ)細胞膜の表面に存在しているSU薬の受容体に結合することによって、インスリンの分泌を促進します。SU薬は短時間で血糖降下作用を発揮しその効力が強い薬物です。副作用として低血糖に注意です。
②速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)はSU薬ではありませんが、SU受容体に結合し、インスリン分泌を促進する薬剤です。吸収が速く作用時間も短いことが特徴であり、毎食直前に服用しなければなりません。副作用としては、低血糖に注意します。
これらの糖尿病薬は、食事療法や運動療法の実践が前提となって効果を発揮するものであり、食事療法に代わるものではありません。また、1型糖尿病やインスリン注射をおこなわなければいけない状態の場合には、インスリン治療です。
(執筆・監修:東京女子医科大学附属足立医療センター 病院長/東京女子医科大学 特任教授 内潟 安子)
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