治療・予防

元気な赤ちゃん、高齢者も油断しないで
~RSウイルス、手洗い・消毒、ワクチンで予防を~

 近ごろ、夏に流行が見られる「RSウイルス」。乳幼児を中心に、大人もかかる呼吸器の感染症だ。発症すると、ほとんどの子どもや大人は発熱やせきなどで済むが、乳幼児や高齢者は肺炎などを引き起こし、命に関わる恐れもある。「たかが風邪」と油断できない。

 RSウイルスには直接効く薬がない。そのため、医師らは、気付かないうちに感染したり、うつしたりしないよう、手洗いや消毒などの感染対策を改めて呼び掛ける。併せて、60歳以上と妊婦には、昨年から任意で受けられるようになったワクチンの予防接種の検討も勧める。

RSウイルス感染症のセミナー後、写真撮影に臨む(左から)フリーアナウンサーの竹内由恵さん、森戸氏、タレントの丸高愛実さん、俳優の森尾由美さん、宋氏、柳原教授=5月18日、都内

RSウイルス感染症のセミナー後、写真撮影に臨む(左から)フリーアナウンサーの竹内由恵さん、森戸氏、タレントの丸高愛実さん、俳優の森尾由美さん、宋氏、柳原教授=5月18日、都内

 ◇診断難しく、特効薬ない

 RSウイルスは一年を通して感染する身近な感染症だ。もともと、インフルエンザと同じく「冬かぜ」の代表だったが、2021年以降は夏にピークを迎えている。ただ、流行が始まるタイミングは年ごとに異なり、期間は地域でも違う。

 小さな子どもが感染するものと思われがちだが、高齢者も気を付けたいウイルスで、中でも呼吸器疾患や心臓病などの基礎疾患を持つ人は重症化のリスクが高い。

 感染すると、潜伏期間の5日前後を経て、発熱やせき、鼻水などが出る。数日で回復することが多いが、ウイルスが下気道に広がると、せきがひどくなり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難を引き起こし、肺炎などになる場合もある。

 60歳以上の患者数は年に約70万人。入院は約6万3000人で、そのうち、約4500人が死亡するとの推定がある。長崎大学大学院の柳原克紀教授は「あまり認知されていないが、数字で見ても高齢者にとって大変危険なウイルスだ」と話す。

手洗い・うがいなど家庭内での感染対策が大切

手洗い・うがいなど家庭内での感染対策が大切

 RSウイルスが厄介なのは、初期症状が風邪と似ているため、見過ごされやすいこと。その上、高齢者の場合は検査キットを使ってもウイルスが検出されにくく、確定診断が難しい。

 柳原教授は「いつもの風邪よりせきがひどい、治りが遅いなど、おかしいと思うところがあれば、それはRSウイルスに感染していて、重症化するサインかもしれない。早めに医療機関を受診してほしい」と注意喚起する。

 ◇感染しないことが大事

 ただ、重症化しても特効薬はないため、酸素投与や点滴などの対症療法で症状を和らげていくことになる。そうした実情を踏まえ、「感染しないことが大事。警戒を怠らないでほしい」と柳原教授。

  • 1
  • 2

新着トピックス