医療・医薬・福祉

慶應義塾大学とのPHR活用による「薬を大きくて飲みづらいと感じる」患者の予測モデル構築に関する研究論文が医学雑誌「Journal of Medical Internet Research」に掲載

シミックホールディングス株式会社


シミックホールディングス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役CEO 中村 和男)のグループ会社であるharmo株式会社(本社:東京都港区、代表取締役Co-CEO 石島 知、山東 崇紀、内上 昌裕)は、慶應義塾大学薬学部 医薬品情報学講座(所在地:東京都港区、教授 堀 里子)との共同研究による論文『電子お薬手帳を基盤としたPHR活用による「薬を大きくて飲みづらいと感じる」患者の予測モデル構築』が、医学雑誌「Journal of Medical Internet Research」(*1)に掲載されたことをお知らせします。本研究では、harmo株式会社が展開する電子お薬手帳を基盤としたPHR(Personal Health Record:個人健康情報)サービスの「harmo(ハルモ)」を用いた解析から、患者が飲みづらい錠剤・カプセルサイズの閾値や薬が大きくて飲みづらいと感じる患者の特徴を明らかにしました。本研究成果は患者が飲みやすく,不満やストレスを感じづらい製剤設計や処方設計の一助になりえると考えられます。

【研究概要】
研究の背景
患者が医薬品を適正に使用するためには、医療従事者が薬剤の飲みやすさ・扱いやすさなどの服薬ニーズを把握し、それらを考慮した処方設計を行うことが重要です。薬剤の使用感は、一般に、患者を対象としたアンケートによって評価されてきましたが、患者の背景や服用薬剤の正確な把握が困難という課題がありました。上記の課題に対し、harmo株式会社と慶應義塾大学薬学部 医薬品情報学講座は2022年に共同研究契約を締結し、「harmo」を用いたアンケート調査を実施しました。 「harmo」は、アプリケーションの利用者から同意を取得したうえで、医薬品の使用状況に応じて匿名のアンケートを収集できるとともに、調剤歴などのPHRが収集でき、患者背景や服用薬剤の正確な把握が可能です。研究の目的
本研究は、電子お薬手帳を基盤としたPHRを活用し、電子お薬手帳の利用者から収集する服薬ニーズ情報とPHR/製剤情報を組み合わせることで、患者背景や処方背景を用いた「大きくて飲みづらいと感じやすい」患者の予測モデルを構築すること、また、患者が飲みづらい薬剤の大きさの指標とその閾値を見出すことを目的に実施しました。方法
2022年12月1日(木)~2022年12月7日(水) に、harmo利用者のうち過去90日以内に錠剤・カプセル剤のいずれかが処方されている20歳以上の男女49,505名を対象に、harmoのプラットフォームを利用して「薬の大きさに関するアンケート」を行いました。研究への参加同意を得られた利用者から、大きくて飲みづらいと感じる薬剤の有無および名称、嚥下障害の有無といった服薬ニーズ情報を収集するとともに、匿名化を保持した状態でアンケート回答と回答ユーザーのPHR(調剤履歴等)を連結し、大きくて飲みづらいと感じる患者の特徴の解析、薬剤の特徴を解析しました。結果
有効回答は1,501 名であった(飲みづらい薬あり:212名)。大きくて飲みづらいと回答のあった薬のうち、製剤情報が特定できた147剤を対象に解析した結果、患者が飲みづらい薬剤の大きさの最適な指標は「長径+短径+厚さ」であり、その閾値が21.5 mmであることが明らかとなりました。多変量解析の結果,50 歳未満,女性,嚥下障害,大きい錠剤・カプセルの服用(「長径+短径+厚さ」が 21.5 mm 以上)が飲みづらいリスクを上げる要因として抽出されました。また、決定木分析では、大きい錠剤・カプセルの服用があり、かつ嚥下障害を有する患者が最も高リスクである(飲みづらい回答割合:34.0%)ことが示され、両者の要因を持つ患者に服用を容易にする措置やアドバイスの必要性を考慮すべきと考えられました。




本研究結果は、患者選好に基づく育薬(医薬品・製剤最適化)のためのエビデンスとして、飲みやすく使いやすい薬の開発や処方デザインへ生かすことを目指しています。

【論文情報】
(タイトル)Factor Analysis of Patients Who “Find Tablets or Capsules Difficult to Swallow due to Their Large Size” Using the Personal Health Record Infrastructure of Electronic Medication Notebook
(著者名)Masaki Asano1, Shungo Imai1, Yuri Shimizu1, Hayato kizaki1, Yukiko Ito2, Makoto Tsuchiya2, Ryoko Kuriyama2, Nao Yoshida2, Masanori Shimada2, Takanori Sando2, Tomo Ishijima2, Satoko Hori1
1Division of Drug Informatics, Keio University; Faculty of Pharmacy and Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Tokyo, Japan
2 harmo Co.,Ltd, Tokyo, Japan
(雑誌)Journal of Medical Internet Research
(DOI)/10.2196/54645
論文掲載URL: https://www.jmir.org/2024/1/e54645

【本共同研究について】
・harmo株式会社(代表取締役Co-CEO 石島 知、山東 崇紀、内上 昌裕)と慶應義塾大学薬学部医薬品情報学講座(教授 堀 里子)は共同研究契約を締結し、「電子お薬手帳を基盤としたPersonal Health Record (PHR)活用による治療最適化に関する研究」に取り組んでいます。本研究成果は共同研究の一環で実施したものです。
詳しくは共同研究Webサイトをご覧ください。
「PHRでつながる、育薬につなげる。」
https://harmo.keio-di.jp/
(*1) Journal of Medical Internet Research (JMIR)は、カナダに本社を置くオープンアクセス出版社であるJMIR Publications社が発行する医学雑誌です。2023年におけるインパクトファクターは7.4と、高い影響力を有する雑誌です。

■慶應義塾大学薬学部医薬品情報学講座について
医薬品情報学講座では、情報学を基盤とした学際的なアプローチにより、医療や地域社会における諸課題の解決に取り組んでいます。特に、薬学的視座での疾患予防・治療の個別最適化と医療安全の推進を中心に据えています。リアルワールド(医療現場、地域や生活の場)における“情報”(= 医療・健康情報)の収集、 解析・評価、 検証(ラボワークも含む)、それらを通じた新規のエビデンス・システムの創出までを目指しています。
https://keio-di.jp/

■harmoについて
harmo(ハルモ)は、個々人の医療・健康情報を個人やご家族が活用可能なサービスを開発・提供しています。「harmoおくすり手帳」はスマートフォンアプリケーションおよび専用ICカードを合わせ約44万人の利用者を擁し(2024年1月現在)、全国2万軒以上の薬局で利用実績があります。また、川崎市・神戸市・豊中市・滋賀県・さいたま市などの地域においては、薬剤師会と協業し、地域住民の健康増進に資する活動を展開してまいりました。
https://www.harmo.biz/

■シミックグループについて
シミック(CMIC)は、1992年に日本で初めてCRO(医薬品開発支援)事業を開始し、今では開発から製造、営業・マーケティングまでの医薬品に関する総合的な支援業務を提供しています。製薬・バイオテクノロジー・医療機器などの海外企業の日本市場参入や、アジアでの臨床試験実施、米国と日本における医薬品開発および製造のサポートなども展開しています。また、シミックは個人や自治体を支援する新しいヘルスケアソリューションを提供しており、製薬企業のバリューチェーンを全面的に支援する豊富な経験と実績を基盤として、“個々人の健康価値を最大化”する事業モデルPHVC("Personal Health Value Creator”)の展開を目指しています。シミックグループは、世界中に7,500人を超える従業員とグループ会社28社を擁しています。詳しくはウェブサイトをご覧ください。
https://www.cmicgroup.com/
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