医療・医薬・福祉

再発・進行頭頸部がん患者を対象としたiPS-NKT細胞動注療法に関する第I相医師主導治験が完了しました

国立大学法人千葉大学

                         iPS-NKT製造の流れ

千葉大学病院(病院長:大鳥精司)と理化学研究所生命医科学研究センター(センター長:山本一彦)は、iPS細胞からNKT細胞を作製した「iPS-NKT細胞」を、頭頸部がん患者さんの腫瘍血管内に直接投与する治療法を第I相医師主導治験(First in Human試験)として行ってきました。
このたび、本治験で目標症例数を達成し、iPS-NKT細胞を高用量で投与した際の人での安全性が示されましたので、ご報告いたします。今後、詳細なデータ解析を行った上で国際誌に内容を発表するとともに、iPS-NKT細胞の有効性を高める新たな治療法の開発に取り組んでまいります。


<経過>

 2018年12月 27日  PMDAと「iPS-NKT細胞」に関する治験相談を実施
 2020年 5月 20日  千葉大学医学部附属病院治験審査委員会にて承認
  5月 27日  厚生労働大臣に治験届を提出
  10月 14日  第1症例目に低用量での投与を開始
 2021年 9月 21日  低用量での安全性が示されたため、高用量での検討開始
 2023年 8月 31日  高用量での最終症例への投与が完了
  11月 1日   外部委員会により高用量投与の安全性を確認
 2024年 1月 23日  治験終了届提出


<治験の概要>

試験名    :「再発・進行頭頸部癌患者を対象としたiPS-NKT細胞動注療法に関する第I相試験」
◆ 目的 : これまでに「iPS-NKT細胞」が人の血管内に直接投与された経験はないことから、
         本治験では、人に対する「iPS-NKT細胞」の安全性について評価することを目的と
         した。
       ・忍容性(副作用などの発現状況を評価することで、人に対する適切な投与量を
           検討すること)
   ・安全性(どのような有害事象がどの程度発現するのか)
    ・有効性
試験デザイン: 単施設、非盲検、非対照、用量漸増試験
対象疾患  : 標準治療後又は標準治療の適応とならない再発・進行頭頸部癌
投与された被験者数 : 10名
評価項目  : 主要評価項目:忍容性(用量制限毒性発現の有無)
副次評価項目:安全性(有害事象の発生頻度と程度)
       有効性、免疫動態調査


<治験の実施体制>

治験責任医師
  千葉大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 飯沼 智久
治験調整医師(代表)
  千葉大学大学院医学研究院 免疫細胞医学 本橋 新一郎
治験製品製造及び提供責任者
  国立研究開発法人理化学研究所 古関 明彦
治験実施支援(調整事務局、モニタリング、データマネジメント、統計解析、試験コーディネート)
 部門
  千葉大学医学部附属病院 臨床試験部  花岡 英紀 


<本研究への支援>

本研究は、下記機関及び企業より支援を受けて実施いたしました。
◆ 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
  再生医療実用化研究事業:「企業の協力を得ながらプロトコルを組む医師主導治験」
  研究代表者:国立研究開発法人理化学研究所 古関 明彦
◆ ブライトパス・バイオ株式会社


<NKT細胞の特徴>
リンパ球の一種で、がんに対して強い攻撃力を持つが、人の血液中にわずかしか存在せず(0.01%程度)、個人差も大きく、実用化へのハードルが高かった。

<iPS-NKT細胞>
iPS細胞からNKT細胞を分化・作製した細胞。高機能を備えたままの細胞を増殖可能。頭頸部がんに直接投与することで高い治療効果と実用性が期待される。

【本橋 新一郎 医師のコメント】
2020年5月に治験届を提出し、コロナ禍の混乱の中で治験が開始されましたが、無事にプロトコールを完遂することができ、主な目的であったiPS-NKT細胞の安全性について評価を行うことができました。現在、iPS-NKT細胞を用いた新たな臨床研究も行っており、一刻も早くiPS-NKT細胞を用いた治療を臨床現場に届けられるよう、今後も最善を尽くして参ります。
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