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レバノン:イスラエル軍の攻撃激化で医療施設の閉鎖続く──民間人と医療の保護を

国境なき医師団

首都ベイルートの市街地で生活必需品を配布するMSFのチーム=2024年10月2日 (C) Maryam Srour/MSF

レバノンへのイスラエル軍による激しい攻撃が続く中、空爆を受けている地域の医療施設は閉鎖を余儀なくされ、レバノン国内では人びとの医療アクセスが奪われている。同地で活動する国境なき医師団(MSF)も活動の一部中断を強いられてきた。MSFは、すべての紛争当事者に対し、レバノンの民間人、医療施設、医療従事者を保護し、人びとの緊急の医療アクセスを妨げないよう強く要請する。
2週間で50人の救急隊員が犠牲に
国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、10月1日現在、6つの病院と40の診療所が、戦闘の激化を理由に閉鎖を余儀なくされた。また、この2週間で、イスラエル軍の攻撃によって少なくとも50人の救急隊員の命が奪われた。これにより、レバノン保健省の統計では、昨年10月以降に死亡した医療従事者の総数は100人を超えた。


レバノンのMSF緊急コーディネーター、フランソワ・ザンパリーニは、「支援を必要としている人びとのケアを確実に継続しなければなりません。MSFはすべての当事者に対し、国際人道法を尊重するよう求めます。民間人、民間インフラ、医療施設や医療関係者は攻撃の標的にしてはならず、安全が保証されなければなりません」と訴える。
イスラエルによる激しい空爆、MSFも活動を一時中断
MSFは現在、稼働可能な施設での医療提供を継続し、今後の医療ニーズ増加を見据えて活動規模の拡大を進めている。しかしこれまで空爆により活動の一部中断を強いられてきた。


ザンパリーニは、「攻撃の激しさ、道路の損傷、安全が保証されていないことを考慮すると、レバノンのすべての被災地が到達不可能となっています。医療と人道的なニーズが高まっているにもかかわらずです」と述べる。


先週、MSFはベイルート南郊にあるパレスチナ人難民キャンプ、ブルジバラジネにある診療所の完全閉鎖を余儀なくされ、レバノン北東部のバールベック・ヘルメル県での活動も一時的に停止した。これらはいずれも空爆の影響を強く受けている地域だ。医療施設の閉鎖により、当該地域の弱い立場にある人びと、特に慢性疾患を抱える患者は、必要な医療を受けられなくなっている。


MSFは今週からヘルメルの診療所については部分的に再開し、症状やリスクに応じて、患者が2~3カ月分の薬を受け取れるようにすることができた。一方、南部のナバティーエ県でMSFが支援を計画し、医薬品と外傷キットを寄付した病院のひとつは、前線からわずか数キロしか離れておらず、10月5日に攻撃を受け被災した。


紛争が激しいレバノン南部では、支援のニーズは高いものの医療スタッフの安全が保障されていないため、MSFもフル稼働できない状態が続いている。例えば、昨年11月以来、ナバティーエ県などイスラエルとの国境に近い南部地域では、MSFの移動診療チームが域内の診療所を支援してきたが、現在は活動停止を余儀なくされている。このチームは、かつては国境付近まで行くことができたが、現在は国境から北に約50キロ離れたサイダまでの活動に限られている。

首都ベイルートの公共ビーチで国内避難民に一次医療と医薬品を提供するMSFの移動診療チーム=2024年9月30日 (C) Salam Daoud/MSF

悪化するレバノンの人道危機
紛争は、国内にすでに存在した危機的状況を悪化させている。レバノンの医療システムは、経済危機によって過重な負担を強いられ、多くの医療スタッフの国外流出をまねき、医療施設はひっ迫する状況が続いてきた。各地の診療所は、すでに能力の限界にあるが、国内避難民の増大する医療ニーズへの対応を迫られ、圧力は高まるばかりだ。


国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、レバノンにおける国内避難民の数は100万人を超え、その規模は、適切なシェルターを提供する国の対応能力を大幅に上回っているという。現在、国内の避難所の大半は劣悪な状況にある。これに対しMSFは、ベイルート県、山岳レバノン県、サイダ(南レバノン県)、トリポリ(北レバノン県)、ベッカー県、アッカール県など、国内各地に12の移動診療チームを配備。診療および心理的サポートに加え、マットレス、衛生キット、温かい食事、清潔な水の提供を行っている。


MSFは1976年にレバノンで活動を開始。2000年以降は中断することなく活動を続けている。
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