食事は「量」も大切
~高齢者の低栄養(国立長寿医療研究センター 荒井秀典理事長)~
食欲が落ちたり、かむ力が弱くなったりして食事量が減り、体を動かすエネルギーや筋肉などを作る栄養が不足した状態を「低栄養」と呼ぶ。特に高齢者ではその割合が高い。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の荒井秀典理事長は「食事の質はもとより、十分な量を取ることも大切です」と話している。
体重を維持できる食事量を
◇要介護や死亡リスクに
高齢者の低栄養の原因は、「がんなどの病気やその治療の副作用で食欲が落ちたり、虫歯や歯槽膿漏(のうろう)など口腔(こうくう)状態の悪化でそしゃくが難しかったりとさまざまです」。退職などで社会的活動量が減り食事を取ること自体が面倒になるケースや、年金生活で食費を切り詰めてしまい、物理的に十分な食事が取れていないケースも。
厚生労働省の最新の調査結果では、体格指数(BMI)が20以下の低栄養傾向と考えられる人の割合は65歳以上が男性12.4%、女性20.7%、85歳以上ではそれぞれ17.2%、27.9%と、加齢に伴い低栄養状態に陥るリスクは高まるとみられる。
「低栄養になると、倦怠(けんたい)感や疲労を感じやすい、風邪を引きやすい、または治りにくい、床ずれを起こしやすい―といった事態に陥ります。進行すれば、筋肉の量や質が低下する『サルコペニア』になり、要介護や死亡リスクにもつながりかねません」
◇半年ごとに歯科健診を
病気やその治療が原因であれば、管理栄養士の指導の下、栄養状態の改善に取り組むことができる。
一方、それ以外の人が取れる対策については、「ダイエットなどをしていないのに半年間に2キロ以上の体重減少がある場合は、かかりつけ医に相談を」。食欲や体重減少、ストレスなどに関する質問票を用いたスクリーニングテストで低栄養を診断する。口腔機能の低下(オーラルフレイル)も高齢者では低栄養のリスクになるため、半年に1回は歯科健診を受けることも重要だ。
もちろん、子どもや成人でも低栄養は起こり得る。そのため、老若男女問わず、炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素をバランス良く、かつ十分な量が取れる食事が望ましい。
「とりわけ高齢になると、食事は少量でよい、歯の状態悪化もあり肉や魚よりも野菜を多めに取る方がよいと誤解されがちですが、極端な肥満でない限り食事量を意識して体重維持を心掛けましょう」と荒井理事長は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/11/19 05:00)
【関連記事】