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肝臓病になると、皮膚には異常がないにもかかわらず、全身にかゆみを感じることが多い。中でも肝硬変の一種である原発性胆汁性胆管炎は、かゆみの発現率が高く、約7割の人に症状が見られるという。肝臓病とかゆみの関係について、順天堂大学大学院環境医学研究所(千葉県浦安市)所長の高森建二名誉教授に聞いた。
▽解明進むかゆみの原因
かゆみにはヒスタミンという物質が原因となる末梢(まっしょう)性のかゆみと、オピオイドという物質による中枢性のかゆみがある。中枢性のかゆみには、抗ヒスタミン薬やステロイド外用剤などの末梢性のかゆみに対する治療薬は効かない場合が多い。
かゆみの悪循環を引き起こす仕組み
「中枢性のかゆみには、かゆみを起こすβエンドルフィンと、かゆみを抑えるダイノルフィンというオピオイドが関与しています。肝臓病による全身のかゆみは、体内でβエンドルフィンが増えて、二つの物質のバランスが崩れることで起こります」と高森名誉教授。
そうした中、従来の治療を行っても症状が改善しない肝臓病のかゆみに対して、2015年から「ナルフラフィン(商品名レミッチ)」という薬剤が使用できるようになった。脳の中で活性化したオピオイドのバランスを元に戻すという、従来の治療薬とは異なるメカニズムでかゆみを抑えるという。
また、原発性胆汁性胆管炎などの肝臓の疾患があると、胆汁の流れが悪くなり、かゆみが生じる。原因物質として近年注目されているのが、胆汁の成分である胆汁酸に含まれるオートタキシンという酵素が産生するリゾホスファチジン酸だ。このかゆみの発症原因に基づく新薬の開発が進められており、かゆみを抑えることが確認されているという。
▽悪循環を防ぐには
肝臓病になると皮膚が乾燥しやすくなることもかゆみの原因になる。かゆい部分をかくと皮膚のバリアー機能や保湿機能が低下して、さらに乾燥が進み、少しの刺激にも敏感になるという悪循環を起こす。「バリアー機能を保つ上で重要なのは保湿です。肌を洗う際にこすり過ぎず、風呂の温度もぬるめにして皮脂を守ることが大切です」と高森名誉教授。
このように、全身のかゆみは肝臓病などの重大な病気のサインになる可能性もあり、早期発見、治療が重要だ。高森名誉教授は「かゆみは睡眠障害などの原因になり、生活の質が低下します。肝臓病によるかゆみのメカニズムは徐々に明らかになってきており、よく効く薬があるので医師に相談してください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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