かゆみ 家庭の医学

 かゆみは、皮膚や皮膚と隣接する粘膜には起こりますが、内臓や脳などが痒いということはありません。その意味で、かゆみは皮膚病の特徴の一つです。かゆみを伴う皮膚病は少なくありません。

■かゆみの原因
 かゆみの原因になるものにはいろいろあります。皮膚の摩擦、圧迫、温度の変化などの物理的な刺激でも起こってきますが、何か毒物が皮膚のなかに入ってはじめて起こるものもあります(虫刺〈ちゅうし〉症=虫刺され)。こういったかゆみを起こすものは“起痒(きよう)物質”と呼ばれています。黄疸(おうだん)などの肝臓障害、糖尿病などの全身性の病気や妊娠時にかゆみがでることもあります。ストレスなどの心理的要因も関与することもあります。
 たとえば、じんましんの一部はアレルギーで起こるといわれています。このときは、ヒスタミンと呼ばれる有害なアミンができてきますので、ヒスタミンのはたらきを抑える抗ヒスタミン薬を内服すると、じんましん、かゆみがとまります。
 かゆみと痛みは類似の感覚ですが、別個の感覚と考えられています。ハチに刺されると痛くて、カに刺されるとかゆみが生じます。中間の感覚があらわれることもあり、そのときは、私たちは「痛がゆい」という表現を用います。
□かゆみのいろいろ
 かゆみがあるとき、それが自然に強くなったり、弱くなったりすることがあります。一般に寝床に入ると、かゆみは強くなる傾向があります。あたたまって皮膚が充血してくるからです。同じことは、飲酒のあとでも起こります。かゆいときの飲酒はできるだけ控えることです。
 いらいらしたり、緊張すると、かゆみが強くなりますが、逆に仕事に夢中になっている間は、かゆみをすっかり忘れているということもあります。かゆみは精神状態に支配されます。そこで、精神を落ち着かせるだけでも、かゆみは軽くなるわけです。
 また、神経質な人ほどかゆみを強く感じますし、のんきな人ではそれほど感じないのも、こういうことがあるからです。たとえば、非常にかゆい疥癬(かいせん)という病気があります。それをすこしもかゆがらない人がいることもあります。

■治療のしかた
 かゆみをとめる薬は“止痒(しよう)薬”と呼ばれています。これには次のようなものがあります。
□内服療法
・副腎皮質ステロイド
 アレルギー症状や炎症症状が強いときに使われます。副作用に十分注意する必要があるので、必ず専門医の処方によって内服してください。
・抗ヒスタミン薬
 かゆみを起こす原因であるヒスタミンを抑える薬です。第一世代、第二世代の抗ヒスタミン薬を区別します。第二世代は比較的新しい薬でヒスタミンなどのかゆみのもとになる物質が細胞から出てこないようにはたらきます。第一世代薬より、アレルギー症状を抑え、かゆみをとめるはたらきが強いといわれています。
・精神安定薬・神経伝達物質の遮断薬
 かゆみをとめるのに医師の処方で使われることもあります。心因性のかゆみがあらわれる人には前者が有効なことがあります。
□膏薬療法(外用療法)
 外用薬のなかにレスタミンなどの抗ヒスタミン薬“かゆみどめ”が含まれているものもありますが、多くは副腎皮質ステロイド含有薬が使われます。また、ワセリンなど保湿薬を塗布することもかゆみ止めにある程度効果を発揮します。広範囲、あるいは全身性のかゆみには、やはり前述の内服療法が必要です。
□光線療法
 長波長、ないし中波長の紫外線を照射することにより、かゆみを抑えることができます。アトピー性皮膚炎乾癬(かんせん)の治療に効果があります。