肝硬変〔かんこうへん〕

 肝臓がかたくなる病気で、肝臓の表面に大小の結節ができ、ヒキガエルの背中のようにいぼだらけになります。ある時期までは肝臓はむしろ大きくなりますが、末期になるとかえって小さくなります。
 肝細胞がん(HCC)ができやすいので、定期的な検査が必要です。

[原因]
 肝炎ウイルス、アルコール、低栄養などがあります。日本の肝硬変は肝炎ウイルスに関係したものがほとんどです。慢性肝炎の10%前後のものが、長い年月のうちに肝硬変に移行するといわれています。心臓病、バンチ症候群、ウイルソン病、ヘモクロマトージス、薬品の中毒などでも起こります。

[症状]
 代償性と、非代償性とがあります。代償性のものでは症状がなく、ただかたい肝臓に触れるだけで、肝機能検査でもまったく異常がない例もあります。非代償性のものでは、はじめ胃腸がわるい感じ、上腹部のはった感じがあり、食欲がなく、便秘をしたり、下痢をしたり、吐いたりします。そのころ、右上腹部にかたくなった肝臓を触れます。多くの場合、同時に脾(ひ)臓がはれてきます。
 また、手のひらが赤くかがやいたようになります。皮膚にクモ状の血管腫があらわれます。“女性化乳房症”といって、男性であるのに乳房が大きくなることもあります。これらの症状の起こりかたは、いずれもゆるやかです。
 次の時期では、腹の皮膚にはウネウネとした静脈がみとめられます。腹がふくれるのは、腹の中に水がたまるためです。食道の静脈もこぶのように拡張し(食道静脈瘤〈りゅう〉)、これがやぶれて出血すると、吐血します。大量の吐血のために不幸な結果になるようなこともあります。ますます腹がはれ上がり、腹の中にたまった水を出さなければ、苦しくてたまらないようになります。
 病気が進むと黄疸(おうだん)があらわれ、意識がなくなり、眠ってばかりいるようになり(肝性昏睡(こんすい))、ついには不幸な結果におちいります。なお、肝硬変や肝がんなど肝機能障害が原因となって生体に必要な機能を果たせなくなった状態を“肝不全”といいます。
 肝硬変では肝がんが発生しやすいので、血液検査による腫瘍マーカー(α-フェトプロテインやPIVKA-Ⅱ)の測定および超音波(エコー)検査やCT、MRI検査を定期的におこない、肝がんの早期発見につとめます。

[治療]
 代償性のものは慢性肝炎とまったく同じように扱い、治療します。
 非代償性のものは次のような治療をします。酒類は絶対に禁じます。慢性中毒の原因となっていると思われるものは、すべて避けます。安静が大切で、食欲がないとき、からだのだるいとき、検査成績のわるいときは床につかせます。腹水がたまったときも同じです。
 しかし、経過の長い病気ですから、症状の軽いときは床を離れ、場合によっては仕事はできますが、極力制限するようにします。スポーツは禁止したほうがよいでしょう。
 食事療法が大切です。代償性のものには、たんぱく質を積極的に与えます。高たんぱく食の普及によって、予後はよくなっています。糖は、消化しやすいものを与えます。脂質は特に制限しません。しかし、血中アンモニアがふえて精神症状のあるものでは、たんぱく質を1日30g以下に制限します。果物、野菜を豊富にとります。ビタミンB複合体、ビタミンKなどを豊富にとることが大切です。
 ぶどう糖液の点滴注射、強肝薬、ビタミン、特にビタミンK、B12、副腎皮質ステロイド薬などが注射されます。症状が軽い時期、またはほとんどない時期に強力な治療をする必要があり、症状がはっきりしてしまったものでは治療しても、効果がなかなかあらわれてきません。このような場合は肝移植により治療します。
 合併症として“食道静脈瘤”が起こります。食道静脈瘤は下部食道や胃の入り口にできます。食道静脈瘤は内視鏡を用いて静脈瘤に輪ゴムをかけてしばる方法で治療できます。腹水があれば、まず水分・塩分を制限します。次に、ゆるやかな利尿薬を与えて治療します。高たんぱく、高カロリー食で腹水がとれることもありますので、食事療法は大切です。さらに穿刺(せんし)によって腹水をとることもあります。
 意識がなくなり、眠ってばかりいるような肝性昏睡にはラクツロースを与えます。
 併存する肝がんに対しては、手術をおこないます。肝機能がわるいために手術ができない場合、肝がんが小さいときはまず肝移植を考えます。年齢や肝がんのひろがりによって肝移植ができないときは経皮的にアルコールを注入したり、ラジオ波で焼いたりし、肝がんの数が多かったり、大きい場合は肝動脈塞栓術をおこないます。しかし、これらの治療は手術より成績がわるいので、手術が可能ならなるべく手術を受けることが大切です。
 胆汁の流れがさまたげられて起こる肝硬変(原発性胆汁性肝硬変)や、心臓病で起こるものなどに対しては、もとの病気の治療を早く受けるようにします。慢性のウイルス肝炎から肝硬変になり、この肝硬変に肝がんが発生するのが一般的な経過です。
 また、末期の肝硬変に対しては肝移植の適応となります。肝細胞がんが発生している場合は径5cm以下の腫瘍が1個、または径3cm以下の腫瘍が3個以内であれば移植の適応となるのが一般的です。現在はウイルス性肝炎による肝硬変、原発性胆汁性肝硬変も保険の適用になっています。
 アルコール性肝硬変からの肝がんの発生は少ないといわれていましたが、最近はふえており、アルコールの飲み過ぎは肝がんの発生を助けていると考えられています。

■原発性胆汁性肝硬変
 主として中年女性にあらわれる病気で、小葉間胆管という細い胆管に炎症が起こり、胆汁の流れがわるくなる病気です。免疫学的な異常が背景にあるようですが、くわしい原因はわかっていません。
 初発症状はかゆみであることが多いです。脂肪吸収に障害が生じ、脂溶性ビタミン吸収に支障をきたすこともあります。特にビタミンDが不足して骨の病気(骨軟化症骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など)を併発する可能性があります。
 いっぽう無症候性といって症候がまったくないまま数年経過する例もあります。

[診断]
 検査をすると血液中のIgM、胆汁酸、コレステロールあるいはアルカリホスファターゼ(ALP)、γ-GTPなどの胆道系酵素の値が高いことが多いです。ついで、超音波(エコー)検査をおこなって胆管が太くないことが確認されれば、この病気が疑われます。さらに、血液検査で抗ミトコンドリア抗体が90%の症例で陽性となります。

[治療]
 早い段階で専門医に相談し、ウルソデオキシコール酸(ウルソ)という薬をのめば症状が改善することもあります。初期には胆管だけの変化ですが、徐々に門脈域から線維が伸びて最終的には肝硬変に進展します。また、肝硬変でない時期でも、この病気では胆管に並行して走る門脈が早期から閉塞され、門脈の圧が上昇し、食道胃静脈瘤をきたすこともあります。したがって早期に、内視鏡検査を受けることをおすすめします。
 いったん肝硬変の状態になってしまうとウルソをのんでもあまり効きません。肝機能が低下して黄疸が強く出たり、腹水がたまってきた場合は、肝移植を考えます。
 このように根本的に原因不明であり治療がむずかしいため、厚生労働省の難病医療費助成制度対象疾病(指定難病)に指定され、医療費の公費負担対象となっています。
医師を探す

関連トピックス


関連ニュース


厚労省記者クラブから

2018/11/02
『指揮細胞』である間葉系幹細胞と『実働細胞』であるマクロファージは効果的に肝硬変症の線維化改善、再生促進をもたらす事 をそれらの細胞の生体内での動態も含めて明らかにしました

国立大学法人新潟大学/国立研究開発法人日本医療研究開発機構

2018/05/15
ギリアド・サイエンシズ 非代償性肝硬変と直接作用型抗ウイルス剤治療不成功の C 型肝炎ウイルス感染症患者に対する治療薬 ソホスブビル/べルパタスビル配合錠 日本での製造販売承認を申請

ギリアド・サイエンシズ株式会社