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手術ができないほど進行して見つかったり、手術後に骨や肺などに転移したりした「進行・再発乳がん」の5年生存率は40%を下回る。こうした患者に対して、がん細胞の増殖を止める新薬が2017年と18年に相次いで登場した。従来の薬と併用すると、がんが大きくならない状態で長生きすることが可能になる。国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)乳腺・腫瘍内科の田村研治科長に新しい治療法について聞いた。
▽がんの進行を1~2年抑制
国内の乳がんの年間罹患(りかん)者数は約9万5000人とされる。手術、薬、放射線が治療の3本柱だが、進行・再発乳がんに対しては薬物療法が中心で、がん細胞の性質や進行スピード、再発した部位などを考慮して薬が選択される。
進行・再発乳がん治療薬(CDK4/6阻害剤)の特徴
例えば、女性ホルモンであるエストロゲンの刺激によって増殖するタイプ(ホルモン受容体陽性)の乳がんであれば、その経路を阻害するホルモン療法剤を使う。効果が表れなくなったら、抗がん剤に切り替える。
新薬は「CDK4/6阻害剤」と呼ばれるタイプの飲み薬。細胞は分裂を繰り返すことで増えていくが、この過程で関与する酵素「CDK4」と「CDK6」の働きを抑え、がん細胞の増殖を停止させる作用を持つ。臨床試験の結果から、ホルモン療法剤との併用で効果が高まり、約1~2年はがんの進行を抑えられることが分かっている。
CDK4/6阻害剤には、パルボシクリブ(製品名イブランス)とアベマシクリブ(同ベージニオ)の2種類があり、「どちらも効果に違いはないと考えられます」(田村科長)。副作用には、細菌などを攻撃する血液成分である好中球(白血球)の減少、下痢、吐き気などがあるが、これらが表れた際には医師の指示で投与量を減らすなどの対応を取る。
▽生活の質を維持
CDK4/6阻害剤の対象となる乳がんは、ホルモン受容体陽性などの条件がある。田村科長は「進行・再発乳がんの3~4割が投与の対象になる」とみている。その上で「ホルモン療法剤とCDK4/6阻害剤を併用して、がんを長く抑えられれば、生存期間を延ばすことも期待できます」と指摘する。乳がん患者は、仕事や家事をしながら治療を続けることが多いが、この併用療法なら抗がん剤治療より生活の質は保たれるという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/07/08 11:00)
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