下痢〔げり〕 家庭の医学

 下痢は、液状、または液状に近い軟便を排泄(はいせつ)する状態で、排便回数は1日2~3回以上になります。
 急に起こる下痢の多くは、急性腸炎です。腹部が痛くなったり、熱が出たりすることがあります。食あたりや暴飲暴食時に多くみられます。食べた物がいたんでいなかったか、海外旅行に出かけなかったかなどを確認することが重要です。また、ウイルス性のものはいわゆる「おなか風邪」です。冬にノロウイルスが原因の急性腸炎が流行することがあります。生ガキなどを食べたあと発症することが多く、食中毒の原因となります。こまめな手洗いが重要です。そのほか、のんだ薬の副作用、特に抗菌薬などの副作用で下痢をすることも多く、ひどい場合は血便が出ます(薬剤性大腸炎)。
 精神的な問題でも下痢が起こります。これが神経性下痢です。また、乳を飲むと下痢や腹痛を起こす人がいます。「牛乳不耐症」と呼ばれ、生まれつき小腸に乳糖分解酵素がないことが原因です。
 下痢が慢性に起こる場合は、潰瘍性大腸炎クローン病のこともあり、しばしば血便になります。また、過敏性腸症候群によって下痢をすることも多くみられます。

■養生法
 急な下痢では、まず原因をはっきりさせる必要があります。下痢自体は心配することはなく、薬によって無理に下痢をとめるのはよくありません。下痢を起こした原因の手当てが大切です。食べすぎ、寝冷えなどが原因と思われるときは、安静を保ち、腹部を冷やさないようにします。
 急性の下痢の場合、食欲があれば食べてもいいですが、冷たいものやアルコール飲料は避けます。食欲がなかったり、吐き気が出たときは無理に食べる必要はありませんが、なにも食べない状態が続くと、からだの水分・塩分が失われて脱水状態になりますので、スポーツ飲料などを飲むとよいでしょう。飲食が困難なときは病院に行って点滴などを受ける必要があります。
 下痢がひどい場合は、医師の処方によって下痢どめを使います。また、海外旅行帰りのひどい下痢や食中毒などが疑われるときは、すぐ医師の診察を受け、便の検査をして、どのような菌が原因かを早めに調べるようにします。抗菌薬によって治ったり、逆に悪化することもあり、医師の診察を受ける必要があります。
 慢性の下痢の場合も、その原因をはっきりさせる必要があります。脂っこいものや繊維の多いものは避けるようにします。神経的な下痢では、ストレスを避けることが必要で、ひどい場合は精神科や心療内科で相談をしたほうがよいこともあります。

(執筆・監修:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 名誉院長 大西 真)