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がんの発生に関連する複数の遺伝子を網羅的に検査して、個々の患者に最適な薬を探す―。そんな医療が保険診療で受けられるようになった。2019年6月、「がん遺伝子パネル検査」と呼ばれる検査に公的医療保険が適用された。国立がん研究センター先端医療開発センタートランスレーショナルインフォマティクス分野(千葉県柏市)の土原一哉分野長に検査の概要と課題を聞いた。
▽100以上の遺伝子を検査
がんは遺伝子の変異が積み重なって発生するが、この20年の間に、特定の遺伝子の働きを阻害するといった作用で、がんの増殖を抑える薬剤が相次いで実用化されている。臨床試験(治験)中の新薬も多数ある。
遺伝子パネル検査は、手術で摘出するなどした患者のがん組織を用いて、一度に100種類以上の遺伝子を調べる。がんの原因とみられる変異が見つかれば、それを標的とした薬があるかをがんの専門家会議が協議し、主治医に助言する。検査結果と専門家の助言を基に、主治医と患者で治療方針を検討する。
対象となるのは血液がん以外で、「標準的な治療法がないがんの患者」や「進行または再発がんで、確立している治療法で効果が得られなくなった患者」。検査結果から、治験中の新薬などが効く可能性が認められれば、治験に参加することなどが可能になる。
▽治療につながる人は10~20%
とはいえ、「検査を受けた人のうち、検査結果に基づいた治療を受けられるのは10~20%程度です」と土原分野長。効く可能性のある薬剤が見つかっても、実際にその患者に有効で安全かどうかは未知数だという。
また、患者が検査を受けてから主治医に結果を聞くまで、1カ月半~2カ月かかるとみられる。新薬の治験に参加するとしたら、手続きにさらに時間を要する。想定外の遺伝性のがんに関係する遺伝子変異が見つかるケースもあり、主治医から本人、本人から家族にどのように伝えるかを決めておくことも必要だ。
検査は全国167カ所の病院で受けられる(19年4月時点)。病院の一覧表は厚生労働省のウェブサイトに掲載されている。検査費用は56万円。3割負担なら約17万円で、高額療養費制度を利用すればさらに軽減される。データは患者の同意のもとに中央機関(がんゲノム情報管理センター)に登録され、今後の研究目的に供される。(メディカルトリビューン=時事)
(2019/11/21 07:00)
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