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私は外来でさまざまなけがの患者さんを診療しますが、特に自転車走行中のけがを非常に多く経験します。中には大きな手術が必要になるケースもあり、自転車は自動車に勝るとも劣らない「危ない乗り物」だと思います。
たかが自転車と侮るなかれ。ルール違反は大事故を引き起こす場合も
◇子供から高齢者まで
警察庁交通局の調査では、自転車関連の死亡事故は年間450件以上に上ります(*1)。毎日1人以上が自転車事故で亡くなっているということです。そのうち65歳以上の高齢者が半数以上を占めます。
死亡に至らない重傷事故の件数も含めると、2019年は8660件、65歳以上が3542件です(*1)。自転車は、子供から高齢者まで誰でも乗れて免許も不要。気軽に利用できる便利な交通手段です。その分、事故リスクを軽視し、不注意な運転をする人も多いように思います。
◇生死を分けるヘルメット
また、ヘルメットを着用していなかった人の致死率(死傷者に占める死者の割合)は、着用していた人の2.5倍とされています(*1)。
むろんこのデータは、ヘルメットをきちんと着用する人は運転も慎重な傾向があり、そもそも死に至るような大きな事故を起こしにくい、と解釈することもできます。しかし、大きな事故で頭部を強く打撲した際、ヘルメットを着用しているかどうかが生死を分ける可能性もあるのは間違いないでしょう。
◇二人乗り、スマホ
自転車事故で病院に来る方の中で比較的多いのが、子供との二人乗りで子供がけがをしてしまうケースです。「子供がシートベルトをせずに乗っていて、自転車が傾いた時に転落した」「走行中に後ろの座席に乗っていた子供が電柱に頭をぶつけた」といったけがも多くあります。子供を後ろに乗せた二人乗りの場合、親からは様子が見えないため、より一層注意が必要です。
東京都はホームページ上で「自転車利用者の守るべきルール」としてヘルメットの着用を推奨しているほか、「次の運転は禁止」として、(1)スマートフォン・携帯電話の使用(2)傘差し運転(3)飲酒運転(4)運転中のイヤホン・ヘッドホンの使用―を挙げています(*2)。
実際、スマートフォンを見ながら自転車に乗っていた人に衝突されてけがをした、という歩行者が病院に搬送されるケースもよくあります。大変危険ですので、やめていただきたいと思います。
◇高額賠償の請求も
これらに加えて東京都は「自転車事故に係る高額賠償請求事例も発生しています。万が一の備えとして、自転車保険に加入しましょう」と注意喚起しています。
2015年の兵庫県を皮切りに、近年多くの自治体が自転車保険の加入義務化を条例で定めています。東京都も「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を4月に改正して加入を義務化する予定です(*2)。
自家用車を運転する人で自賠責保険に入っていない人はほとんどいませんが、自転車保険に入っている人はまだ少ないかもしれません。
実は私自身も自転車事故で相手にけがをさせ、賠償請求を受けた経験があるのですが、自転車保険に加入していたおかげでスムーズにことが運びました。月々数百円ですから、通勤や通学で頻繁に自転車を利用する人は加入を検討するのがよいかと思います。(外科医・山本健人)
(参考文献)
(*1)東京都都民安全推進本部HP
(*2)「自転車関連事故に係る分析」警察庁交通局
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