2024/12/18 05:00
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新型コロナウイルスの感染拡大で、働き方が変化したり、経済状態が変わったりして、ストレスを感じている人が増えています。
こうした人に懸念されるのが「ネガティブな同一化」といわれる状態に陥る人の増加です。
産業医の面談の場で、そうした人の相談を受けることが最近、増えているのが気になります。
身体を動かすことは大切(写真はイメージです)【AFP時事】
◇俳優の急逝をきっかけに
企業で新規企画などの管理職として働いてきた40代の女性Aさんは、これまで時間外労働も多く、後輩の指導なども行ってきました。
新型コロナの影響で、業務はリモートが増え、通勤時間が減少。また、業務自体の編成が変わり、Aさんの仕事はかなり量が減ったそうです。
仕事量が減るのは、いいことだと思っていたのですが、これまで帰宅も遅く、家にいる時間があまりない生活だったので、戸惑うことが多く、一人暮らしで、特に趣味などがないAさんは、閑職に追いやられた気分になってしまったそうです。
後輩の指導などもなくなり、リモートの会議に出ようとすると、「その会議は出なくていいですよ」などと言われることもあり、今後のステップアップの道がなくなったと感じています。
そんな時、日頃からテレビで見かけていた俳優の急逝を知り、憂鬱(ゆううつ)な気分に陥ってしまい、抜けだせなくなったそうです。
「あんなにキラキラしているように見えた人でも、将来が閉ざされた思いになったのか」と思い、自分もこの先、同じように追い詰められて、将来が閉ざされてしまうような気持ちに陥ってしまったということでした。
◇「ネガティブな同一化」とは
身内や友人でなくても、また直接知らなくても、よく見かけて、なじみのある人の急逝は、心に衝撃を与えます。まして、その死が自死であった場合の衝撃は、大きいものです。
特に、自分自身、ストレスが大きくて悩んでいる場合や、気持ちが落ち込んでいるとき、急逝した人が同じような環境で行き詰っていたような場合は、「ネガティブな同一化」という状態に陥ることがあります。
メディアで大きく報道される自死も、こうしたリスクを高めます。
例えば、いじめを受けた子どもが自死したという報道があると、同じようにいじめに悩んでいる子どもは「いじめられたら死ぬしか選択肢がないのか」という気持ちに陥ることがあります。これが「ネガティブな同一化」です。
同じような挫折体験を持つ子どもが、自死した子どもと自分を同一化して、自死の連鎖が起きたりするのです。
いじめを受けても立ち直り、元気に登校しているような場合の報道が多くなされれば、「ポジティブな同一化」になりやすいのですが、そうした報道は少ないのが現状です。
Aさんのように、新型コロナの影響で業務内容が極端に変わり、自己肯定感が持てなくなった場合は、気分が低下しています。
これまでの社内での立場が変わって、責任を持つ業務や、指導的な業務が減少した場合などには、適応障害で気分がうつ状態に陥っていることがあるので、こうした状況の時に影響力がある人物などが急逝し、ネガティブな同一化により、さらに気分が落ち込んでしまったと思われます。
◇ネガティブスパイラルからの脱却法
Aさんの場合は、一人暮らしで、リモート業務が多くなり、人との接触が減少したことで、自分の気持ちを表現することが少なったことも、こうした症状の背景になっていました。
また、業務が少なくなった時間を生かす趣味や、身体を動かしていなかったことも、さらにリスクを高めたといえます。
うつ気分になりそうなときは、以下のような行動も効果があります。「ネガティブな同一化を起こしそうだな」と気が付いた場合は、気分を停滞させないように、身体を動かすなどの行動を取ることが大事です。
▽自分の気持ちを話す場を持つ
▽身体を動かす(ウオ―キング、ヨガ、ジョギング、ストレッチ、水泳、自転車に乗る)
▽人との関わりを多くする
▽掃除や洗濯
ただ、うつ気分が継続して1週間以上の場合や、眠りが浅くて朝早く目が覚めるような場合は、医師に相談してください。Aさんの場合は、産業医面談をした後、受診してもらうことにしました。
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