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アレルギー症状で悩む人が増えているが、どう対処したらいいのだろうか。カギは肌の保湿。アトピー性皮膚炎などでも重視される最近の研究成果について、引き続き日本アレルギー学会理事長で国立成育医療研究センターの副研究所長、斎藤博久医師に聞いた。
◇バランス良い食事を
―食物アレルギーを予防するために、妊娠中や授乳中は何に気を付ければよいのでしょうか。
斎藤 子供の食物アレルギーを予防するために、卵、牛乳などのアレルゲンになりやすい食べ物を制限するさまざまな方法が試みられましたが、予想通りの結果が得られたことは一度もありませんでした。
2011年の日本小児アレルギー学会のガイドラインは「妊娠中、授乳中の母親がアレルギー食品を避けることは、予防策として勧められない」と明記されています。同年に厚生労働省の研究班が発表した栄養指導の手引も、食事制限によるアレルギー予防には十分な根拠がないとしています。
離乳後の子供には偏った食事ではなく、さまざまな食品をバランス良く取らせることが大切です。もちろん、すでにアレルギーの症状がある場合は、アレルゲンを特定して避ける必要がありますので、医師の指導を受けてください。
◇皮膚から浸入
―アレルゲンは食事以外に、皮膚から体内に浸入するケースもあるということですが、どういうことですか。
斎藤 アレルギーは免疫の過剰反応によって起きることに間違いはないのですが、最近の研究ではアトピー性皮膚炎のような状態の皮膚ではバリアー機能の低下が起こり、皮膚からアレルゲンが侵入し、そのためアレルギーが起こる場合があると分かりました。
ギデオン・ラック教授の研究で、英国の子供がピーナツを日常的に口にしていないにもかかわらず、一定の割合でピーナツアレルギーになることが判明。詳しく調べたところ、皮膚に塗るベビーオイルにピーナツオイルが含まれていることが原因だったのです。
―アレルゲンは、どのような経路をたどって皮膚から体内に入るのでしょうか。
斎藤 皮膚の表面には免疫細胞の仲間である樹状細胞があり、これが突起を伸ばして異物を取り込んでいます。皮膚のバリアー機能が低下すると、突起が外に伸びやすくなり、異物をどんどん取り込んでアトピー性皮膚炎を発症させます。
つまりアレルゲンが皮膚に付けば、アトピー性皮膚炎、喉の気道に入れば気管支ぜんそく、食べ物を通して口から入れば食物アレルギー、鼻から入ればアレルギー性鼻炎や花粉症になるということです。
日本でも、特定のせっけんを使ったことでアナフィラキシーショックになるという事例がありましたが、あれはせっけんに含まれる小麦成分が皮膚から入り、小麦の食物アレルギーを起こしたからでした。
◇カギは肌の保湿
―皮膚からのアレルゲン浸入には、どう対処したらいいのですか。
斎藤 2014年に私たちが行った臨床研究では、生後7カ月まで肌の保湿をしっかりすることで、アトピー性皮膚炎の発症リスクは3割以上低下するという結果が出ています。
アトピー性皮膚炎にかかると、その後の成長で食物アレルギーや気管支ぜんそく、花粉症にかかるリスクも増してくるということも明らかになっています。
口から摂取した食べ物が全く関係ないとは言えませんが、特定の食材を避けるよりも、保湿剤などで皮膚のバリアー機能を強化して、アレルゲンの侵入を防いだ方が、アレルギー全体の予防につながると言えます。
―大人になってからのアレルギー対策でも、保湿は重要ですか。
斎藤 大人になってからのアレルギー発症では、表皮の樹状細胞が増加します。このため洗剤に含まれる添加物、金属、ゴム、軟こうなど、本来はアレルゲンになりにくい物質にも反応が起こることがあります。主婦に多い手湿疹や薬剤によるアレルギー反応も成人期の特徴です。
まずは皮膚からのアレルゲンの侵入を防ぎ、アトピー性皮膚炎を発症させないようスキンケアを心掛けることが重要です。乾燥して潤いが保てないと、皮膚からアレルゲンが侵入しやすくなります。
私たちの日常生活では大気中の花粉、ほこり、ちり、汗の成分など、さまざまな汚れが肌に付着しますので、まずは汚れをしっかり取ります。ただせっけんを使い過ぎたり、ゴシゴシこすったりするのは禁物。汚れを取ったら、保湿剤を付けて肌のバリアー機能を保護します。
アトピー性皮膚炎を発症してしまったら、速やかに専門医を受診し薬を処方してもらいます。ステロイド剤をはじめ、薬でしっかり治すことが大切。こじらせて慢性化させると、複数のアレルギー症状が連鎖し悪化させる「アレルギーマーチ」を引き起こすきっかけになります。(ソーシャライズ社提供)
■斎藤博久医師 日本アレルギー学会理事長、国立成育医療研究センター副研究所長⇒詳しいプロフィールはこちら
(2017/04/03 10:56)
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