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中途失明の原因で最も多い緑内障は70歳以上の重度視覚障害者の4割以上を占め、日常生活への影響は大きい。高齢の緑内障患者の実際について、奈良井眼科(広島県呉市)の奈良井章人院長に聞いた。
視野が欠けたり、視力が低下したりする
▽無症状でも検診を
緑内障は、眼圧の上昇で視神経が傷つき、視野が欠けたり、視力が低下したりする病気だ。原因はさまざまだが、特に高齢者では眼球内の液(房水)の流れが悪くなり眼圧が上昇することが多い。
また、目にふけのような白い物が付着する「嚢(のう)性緑内障」や房水の排出口に当たる隅角(ぐうかく)が狭くなる「原発閉塞隅角緑内障」などを発症する人も多い。「高齢者の場合、緑内障が進行し、視力が低下してから受診する方が少なくありません」(奈良井院長)。
ただ、早期発見、早期治療で進行を止めることは可能だ。「視野が狭くなったり、視力が低下したりするなどの症状がなくても数年に1度は必ず眼科検診(眼底検査)を受けてください」
▽治療中断で失明も
高齢になってから視力を失うと日常生活には大きな困難が生じる。「視覚障害があっても、認知機能に問題がなければ介護保険の要介護認定を受けられないことが多く、生活支援が不足します」
また、認知症で介護施設に入所すると、眼科治療が中断し、失明してしまうケースもある。認知症が進行すると、徘徊(はいかい)や排せつの問題、暴力行為などの行動・心理症状が表れ、介護する側の負担が重くなる。奈良井院長によれば、失明に至るとこうした問題行動が軽減するため、“介護しやすい”という切実な声すらあるという。
しかし、「視覚機能の低下は認知症のリスクでもあり、眼科治療の中断は将来の要介護者の増加につながりかねません」と指摘する。緑内障の早期発見、早期治療で病気の進行を遅らせ、視覚機能をサポートする用具の訓練などを通じ、見えにくさを軽減することが大切だ。
奈良井院長は「視覚機能の低下で日常生活に支障がある人は、かかりつけの眼科や、視覚障害のある人への支援である『ロービジョンケア』を行う医療機関(日本眼科医会ホームページ)に相談してください」と呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/05/24 05:00)
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