治療・予防

骨粗しょう症の薬で副作用
~薬剤性顎骨壊死(長崎大学病院 大鶴光信講師)~

 骨粗しょう症薬の重い副作用で、顎の骨が腐る「顎骨壊死(がっこつえし)」。抜歯などをきっかけに、歯を支えている骨が歯茎の奥でむき出しになり、痛む、うみが出るなどの症状が表れる。長崎大学病院(長崎市)口腔(こうくう)外科の大鶴光信講師に話を聞いた。

顎骨壊死

 ◇痛み、うみなど

 骨は常に新陳代謝をしているが、骨粗しょう症ではそのバランスが崩れ、新たに骨ができるよりも古い骨が壊される方が優勢になる。その結果、骨がもろく、折れやすくなる。

 現在、骨粗しょう症の治療によく使われるのは、骨を壊す細胞の働きを抑える骨吸収抑制薬だ。骨を強くして骨折を防ぐ効果があり治療に必要な薬だが、重い副作用の一つに顎骨壊死がある。海外の統計によると、抑制薬の飲み薬を使用している骨粗しょう症患者10万人当たり年間1~69人に発生すると報告している。

 顎骨壊死が発生する理由について、大鶴講師は「唾液や歯こうに含まれる細菌が、歯と歯茎の隙間から顎の骨に侵入します。それに抜歯、歯や歯茎の感染などの影響で顎骨の細胞が自死するという説が有力です」と解説する。

 治療法には、患部の洗浄と抗菌薬の投与、壊死した骨を取り除く手術がある。「2~3週間で患部は新たな骨で覆われ、痛みは軽快します」

 ◇早期に手術を

 「10年ほど前は、顎骨壊死は手術をしても治らず、かえって進むと考えられていました」。しかし長崎大学など八つの大学病院で、洗浄や抗菌薬による対症療法と手術療法を比較する研究が行われ、早期に手術する方が治癒率が高いことが分かった。手術に耐えられる体力がある人なら早めに手術をすることで、症状が早期に改善すると期待されている。手術を受けるときも、骨吸収抑制薬は続けてもよい。

 大鶴講師は、薬剤性顎骨壊死を患っている人に「口の中の痛みや違和感があれば、すぐに主治医に相談するようにしましょう」と助言する。骨吸収抑制薬を使用中の骨粗しょう症患者が抜歯をするときは、顎骨壊死が発生するリスクを念頭に置き、主治医から歯科医に紹介状を書いてもらうことを勧めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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