治療・予防

小顎化で起こる舌ストレス
~首や肩の凝りや腰痛の原因に(安藤歯科クリニック 安藤正之院長)~

 現代人は以前に比べて顎が小さく細くなり、歯列のアーチ(歯列弓)も狭いため、舌が歯にぶつかりやすい。そうした舌の緊張状態は肩凝りや頭痛めまいなどの原因になるという。「舌ストレス」の危険性に警鐘を鳴らす安藤歯科クリニック(東京都中野区)の安藤正之院長に聞いた。

舌ストレスは肩凝りや頭痛などの原因に

舌ストレスは肩凝りや頭痛などの原因に

 ▽かむ回数減少が一因

 本来、人間の顎は、横幅があって丸みを帯びた正方形をしており、歯列の内側には舌が収まる。顎を発達させるには子どもの頃から「よくかんで食べる」ことが必要だが、現代人は軟らかい食べ物を好み、食事での咀嚼(そしゃく)回数が少ないため、顎が小さく細くなり、小さな顎は子どもにも遺伝している。

 安藤院長は診療経験から「細長いU字型の顎を持つ人が増えています。当然、歯列のアーチも狭くなるため、舌は狭いスペースに押し込められます」と指摘する。

 狭く、歯の角などで傷つきやすい環境に置かれると、舌は緊張状態に陥り、歯の刺激を避けようと1日中動き回る。舌と一緒に下顎も動き、それが続くと、下顎の位置がずれ、首、肩、背中などの骨や関節のバランスが崩れる。その結果、首や肩の凝り、頭痛めまい、腰痛などの不調を招く。原因不明の不調が、実は舌ストレスによる場合も少なくない。

 ▽ストレスの緩和を

 舌に歯の跡が付いていたり、舌によく口内炎ができたり、歯のとがりが気になったりする人は、舌ストレスを抱えている可能性がある。舌への慢性的な刺激は舌がんのリスクにもなるので、注意が必要だ。

 舌ストレスの緩和には、歯科矯正で歯列のアーチを広げる方法が有効だが、「歯科矯正の適齢は40歳ごろまで。40代以降であれば、舌に当たる歯を丸める方が後戻りも少なく効果的です」と安藤院長。歯の鋭くとがっている部分を0.4ミリほど削ると、舌が楽になり、体調が改善する人も多い。また、この治療法は無痛で、そこから虫歯になることはないという。

 他にも、虫歯治療のかぶせ物や、高齢者では入れ歯が舌ストレスを引き起こすこともある。「舌ストレスについて相談したい時は、舌の大切さをよく理解している歯科医を選ぶといいでしょう」と安藤院長はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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