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10月に韓国ソウルの梨泰院で起きた雑踏事故は、158人が死亡する惨事となった。国内の死亡事故を数多く検証している、滋賀医科大学(大津市)社会医学講座の一杉正仁教授(法医学)に、雑踏でのリスク回避法などを聞いた。
雑踏事故から命を守る
◇転倒から「群衆雪崩」
一杉教授は、ソウルの事故が起きた状況について、狭い坂道に次々と人が集まり、押し合ううちに自分の体を制御できなくなったとみている。体が密着すると自由に動くことができず、誰かの足に引っ掛かるなどして転倒するリスクが高まる。
ひとたび転倒が起きると、次から次へと倒れて群衆雪崩に。人が折り重なることで胸部が圧迫され、呼吸ができなくなって窒息死の恐れがある。きゃしゃで筋力が弱い女性や高齢者ほどそのリスクが高いという。
日本では、「2001年に兵庫県明石市の歩道橋で起きた群衆雪崩による死亡事故を教訓に、雑踏警備の重要性が認識され、警察による誘導などが重視されるようになった」。そのため、韓国の事故のような規模の惨事が日本で起きるとは考えにくいという。
ただし、群衆雪崩にはならないかもしれないが、転倒事故は起こり得る。例えば、ビル内の閉ざされた空間で緊急事態が発生し、1カ所の出口を目がけて人が殺到するようなときだ。年末年始の行事に参加するとき、雑踏事故のリスクは頭に入れておいた方がよいとする。
◇まずは退避
雑踏事故に巻き込まれそうになったらどうしたらいいのか。「まず、その場を離れ、身の回りに十分な空間を確保する」。周囲に人が密集していて逃げられない場合は、「鎖骨の下辺りに両手でこぶしを作り胸部を守る。こぶしは自分の体に密着させず、隙間を空けておく」。窒息を防ぐには、呼吸で胸部が膨らんだり縮んだりするスペースが必要だからだ。
後ろから押されたり、人の流れに乗れなかったりして転んだ場合も同じ。地面と胸部の間に手を入れるなどして、隙間を作るとよい。
窒息したと思われる人がいる場合、すぐに心臓マッサージを開始して救急隊につなげば、救命の可能性はある。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/03/20 05:00)
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