公共施設のAEDで救命者数倍増
利用法学び、素早い行動を
自動体外式除細動器(AED)の公共施設への出荷台数は2017年に78万台を超え、駅やコンビニなど身近な場所でも普通に見掛けるようになった。京都大学環境安全保健機構健康科学センター(京都市)の石見拓教授らの研究では、AEDの使用により一命を取り留め社会復帰した人の割合は、使わなかった場合に比べて約2倍であることが示されている。
助かる命を助けるために素早い行動を
▽4割が社会復帰
AEDとは、心臓が不整脈(心室細動)により細かいけいれんを起こして血流が滞ったときに、電気ショックを与え正常なリズムに戻す医療機器をいう。AEDの大きな特徴は、音声や画像で使い方を指示してくれるので、それに従えば誰もが的確に使用できることだ。AEDが心臓の状態を診断して電気ショックの必要性を判断するため、心臓が動いている人や適応疾患のない人に誤って電気ショックを与えることはない。
石見教授は、05~13年の9年間に、街中で心室細動から心停止を起こした約4万4千人に対する市民のAED使用状況を調査した。実際に市民がAEDを使って救命処置を行ったのは4499人だった。心停止から1カ月後の状態を調べたところ、AEDを使用した人のうち、後遺症がなく社会復帰ができたのは38.5%で、未使用者の場合の18.2%と比べ、AEDの明らかな有用性が認められた。
▽胸骨圧迫を並行
「ただし、医療機関以外でAEDが使われた割合は16.5%(13年)と、いまだ低率にとどまっているのが現状です。呼び掛けても反応が見られない、息をしていないなど心停止が疑われる場合は、ためらわずにAEDを使用してください。電気ショックを与えるかどうかは、AEDが判断します」と石見教授は訴え、迷いが生死を分けることを指摘する。
また、心停止が疑われる場合はAEDだけでは不十分で、胸骨圧迫(心臓マッサージ)が必須条件となる。AEDの使用前から救急隊の到着まで絶え間なく行うことで、さらに社会復帰率の向上につながるという。
石見教授は「救命率は、何もしないと1分ごとに10%下がります。AEDの使用法や胸骨圧迫の方法を習得して、万一の際に素早く行動できるよう備えてほしい」と、全国で実施されている講習会への参加を呼び掛けている。全国の講習会情報は日本AED財団「減らせ突然死プロジェクト」のホームページで確認できる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/04/23 11:00)