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日系人の単純労働を認めた1990年の出入国管理法の改正で、ブラジルやペルーなどの中南米から労働者が多く来日した。インドシナ難民や中国残留邦人らも日本で暮らすようになった。四谷ゆいクリニック(東京都新宿区)の阿部裕院長は、30年前から外国人の精神科医療に携わってきた。
外国人新患・患者数の推移(四谷ゆいクリニック)
◇外国人の精神疾患に対応
「私がスペイン留学から帰国した当時、中南米から来た日系人の精神科医療が問題になっていました。そのため、スペイン語で彼らの診察に携わることになりました」と阿部院長。
開院当初、外国人患者(新患)は全体の2、3割程度だったが、現在は8割程度を占める。言語は、英語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語、中国語などを使用。通訳者と利用者をテレビ電話方式でつなぎ、タブレットなどの画面上に呼び出す遠隔地テレビ電話通訳というシステムを使い診察することもある。
外国人患者の多くが抱えるのは、うつ病と不安障害だ。言葉や文化の問題、環境の違いなどに直面したりして、精神障害を発症することが多い。夫婦間で社会に適応する程度が違うため、「いずれかがうつ病になってしまうケース」も目立つ。
最近は、発達障害、特に注意欠陥多動性障害の受診者が増えている。「母国で処方してもらった薬と同じものがほしい」と求められるが、米国などでは発達障害の薬の種類が多く、処方量の最大値も違うため、対応に苦慮しているという。
◇不足する外国人対応クリニック
93年、海外駐在員や外国人労働者の適応問題に対応するために、多文化間精神医学会(東京都新宿区)が発足した。阿部院長も評議員として支えている。
診療活動の壁になるのが言葉。「スタッフが対応できなければ診療に支障が出ます。若い精神科医には英語のできる人が増えていますが。遠隔地テレビ電話通訳を導入するにしても、資金面の問題があります」
また、「言葉で困っている外国人は、各自治体にある精神保健福祉センター、地域の外国人と日本人の親善のための国際交流協会に連絡を取ってほしい。外国人の知り合いがいる人は、このことを伝えてあげてください」と阿部院長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/08/11 05:00)
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