治療・予防

双極性障害治療の最適化
~入院で診断見直す―順天堂大(加藤忠史主任教授)~

 そう状態(または軽そう状態)とうつ状態を繰り返す「双極性障害」。かつてそううつ病と呼ばれた精神疾患だ。うつ病との鑑別診断が難しく、双極性障害患者の中にはうつ病として治療され、なかなか治らないケースもある。

 そこで順天堂大学病院では、2020年に「気分障害センター」を設置。他の医療機関で下された診断を見直すための双極性障害治療立て直し入院を行っている。治療の最適化を目指す取り組みについて、同大精神医学講座の加藤忠史主任教授に話を聞いた。

他の医療機関で双極性障害と診断された患者に入院してもらい、診断を見直した結果

他の医療機関で双極性障害と診断された患者に入院してもらい、診断を見直した結果

 ◇多角的検査で鑑別

 気分障害センターの立て直し入院では、約2週間かけて脳画像、脳波、ホルモン、心電図、認知機能、心理などの必要な検査を多角的に行う。その理由は「なかなか改善が見られない患者さんの治療を見直す上で、まずは他の病気の可能性を検討し、適正に診断するためです」。

 双極性障害のうつ状態はうつ病と区別がつきにくい。うつ病と診断された患者の1~2割は後にそう状態が出て、双極性障害に診断が変更されるという。「最終的に正しい診断の下で治療を開始するまでに平均4~10年かかるとの報告があります。これは、最初のうつ状態から次のそう状態まで4~5年かかるケースがあることなどが理由です」

 加えて、比較的軽い軽そう状態では診断がより難しい。本人も周囲も困るほどではないケースが多く、専門医でも判断は分かれるという。

 ◇他の精神疾患を併発

 気分障害センターの開設から2年間で、入院患者は計78人(22年10月現在)。このうち診断結果がまとまった患者では、「双極性障害と診断されていたが実際はうつ病、あるいは自閉スペクトラム症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを併発しているケース」が4割を占め、次いで「治療内容が診療ガイドラインに基づいていないケース」が3割、「患者本人が治療と向き合えていないケース」が2割あったという。

 「当センター開設前は、なかなか改善しない患者さんが多い理由として難治性の双極性障害の可能性も考えていましたが、真に治療抵抗性双極性障害と言える場合はほとんどありませんでした。双極性障害と診断され治療を行っていても改善が見られない場合は、まず主治医とよく話し合い、当センターの受診も検討してみてください」。費用は保険診療の枠内で収まるという。

 問い合わせはメールのみ受け付ける。詳細は気分障害センター(www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/mental/mood_disorder)へ。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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