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発達障害といわれる子どもは生きづらく、その親は悩みを抱える。背景にあるのは、社会的なマイナスイメージだ。自身も発達障害だったという脳内科医・小児科医の加藤俊徳さんは「人の脳には個性があり、それによってできる事やできない事がある。発達障害の場合はできない事ばかりがクローズアップされ、偏見につながっている」と考え、イメージを変えるために本を出版した。できる事にもっと光を当てることで発達障害の子どもに自信を持たせ、同時にその親に笑顔をもたらしたいと言う。
発達障害の子どもの1タイプ。話したい事がいっぱいある
◇学校に居られない
関東在住の女性、Aさんの長男は幼い頃、一つの事に集中すると人の話を聞かない傾向があった。一方で、自分の気が済むまでしゃべり続ける。「小学生になると、『授業中に先生の話を聞いていない』と注意されたり、忘れ物の多いことをクラスメートの前で指摘されたりして恥ずかしい思いをしたようです」と振り返る。友人との関係でも相手の気持ちを間違って受け取ったりするため、ぎくしゃくしがちだったという。
進学した中学では、黒板の文字をノートに書き取るのに時間がかかった。「○○君のせいで授業が終わらないよな」。教師の無理解で冷たい言葉。長男は学校に居るのがつらく、登校しなくなった。
◇へこんでしまう日々
「成功して褒められることが少ない。言ってみれば、穴の開いたざるのようなものとして見られているのです」
加藤さんは、発達障害とされる子どもについてこう話す。
多くの発達障害の子どもを診てきた加藤俊徳さん
子どもには、自分のことを冷静に見つめ、振り返る力がない。親からは「何でできないの?」と言われ、友人からは「おまえは駄目だなあ」とばかにされる。それが毎日のように続くと、「自分は『穴人間』なのかと、へこんでしまうのです」と加藤さんは言う。
仕事上の失敗ばかりを上司から叱責されたら、へこむのは大人でも変わらない。子どもの場合はなおさらだ。親は「困った。何とかしなければいけない」と焦燥感にかられ、子どもの長所を見ないようになってしまう。
脳の中には、弱みと同時に強みも存在する。しかし、「ネットなどの情報を見ると、できない事しか書かれていません。できない事のオンパレードです。それで『できない』というレッテルを張られ、偏見を生んでいるのです」と加藤さんは指摘する。
◇親は過保護でよい
親は子どもにとっての「器」であり、植物を育てる土壌のようなものだ。器に栄養がなければ、植物も子どもも成長しない。加藤さんは「親は過保護なくらいでよいのです。わが子をしっかりと守り、『この子はここが強い』と念仏のように唱え続けてください。そうすれば、子どもの弱みを最小限にすることができます」と話す。
加藤さん自身も発達障害だった。母親の支えによって、「へこまない」少年時代を過ごすことができた。時に、妹から「兄さんは本当に過保護にされているのね」と言われることもあったと言う。
同じ発達障害でも、男女差がある。女子はしゃべるのが上手で、多動・衝動という行動が比較的少ない。男子は逆に目立ち、「おまえは駄目だなあ」と見なされてしまいがちだ。
◇脳には番地がある
一人ひとりの顔が違うように、脳にも個性がある。キーワードは「脳番地」だ。加藤さんは20年以上に及ぶMRIによる脳画像の診断を基に、「思考系」や「感情系」、「伝達系」、「運動系」など八つの脳番地があると指摘する。注意欠如・多動性障害(ADHD)の子どもが周囲に気を取られやすいのは感情系が発達しているからで、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもが自分の世界に閉じこもりがちなのは、感情系より言語系の発達が著しいと考えられている。
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