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国内外の研究では介護施設に入所する高齢者の50~80%が慢性便秘と報告されている。認知症高齢者の慢性便秘の改善方法について、聖隷クリストファー大学(静岡県浜松市)看護学部の内藤智義准教授に話を聞いた。
排便しやすい姿勢
◇実証試験で効果確認
高齢者は、腸の活動や便を押し出す力、便意の感覚などが衰える他、運動量の減少や食生活の変化、薬の副作用などの要因で便秘になりやすい。さらに「認知症の人はトイレの場所が分からない、衣服の着脱がうまくできないなどの問題が生じる。決まった時間に排便するということが困難で、慢性便秘になりやすい」。
内藤准教授が浜松医科大で助教だった2020年7月から21年2月、市内の六つの介護施設の協力を得て実証試験を行った。慢性便秘のある80代の認知症患者30人を、水分・食事摂取の促しと下剤管理などの一般的なケアを受けた16人と、排便の習慣化と排便姿勢の指導を組み合わせた「排便ケア」を受けた14人に分け、経過観察した。
排便習慣を身に付けるには▽適切な排便時間にトイレに誘導する▽特に便意を訴えない場合は、胃結腸反射(食物が胃に入ることで腸の運動が促され便意を感じる)が起こりやすい朝食の30分後にトイレに連れて行く▽排便するときは、ロダンの「考える人」像のように、肘を膝の上に置いた前かがみの姿勢で座るのが大事。
「認知症高齢者は背中側にもたれて座ることが多いので、その場合は介護者が補助します。足の裏が床に着くように、背が低い人には足台を用意するなどの工夫も必要でした」
◇認知症の症状も軽減
比較・検討した結果、残便感のない自発的排便(下剤やかん腸などを使用しない)の週当たりの回数が、一般的ケアの人では変化がなかったが、排便ケアを行った人では開始時0.53回から8週後に1.58回と有意に増加。参加者への聞き取り調査では、「トイレが気になる」などの心配や身体的・精神的不快感が改善し、認知症の症状や介護者の負担感も軽減した。
「慢性便秘の対処は下剤やかん腸に頼りがちですが、腹痛などが起こることもあり、根本的な解消にはつながりません。排便習慣や姿勢は誰もが見直すことができます。認知症でない高齢者の便秘解消にも役立ちます」と内藤准教授はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/02/01 05:00)
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