便秘 家庭の医学

 便通は、人によって回数も量もまちまちです。したがって、排便の回数とともに、ふだんとどう違っているかが重要です。たとえば週に2回程度でも、その人にとって量も性状もふつうなら便秘とは呼びません。
 便秘では、なんらかの原因で排便が障害され、便通が1日に1回なく、ときには1週間以上もみられず、腸管に糞便が貯留した状態になります。具合がわるくなければ、自然に出るまでなにもしないでよいこともありますが、具合がわるければ、原因を調べて治療する必要があります。
 急に便が出なくなるのは腸閉塞(イレウス)のことが多く、腹痛・嘔吐(おうと)・腹部膨満を伴います。胃、大腸、婦人科疾患などの腹部手術を受けた人に起こりやすく、何度もくり返す傾向があります。豆やワカメなど、腸内でふくれるような食べ物はとりすぎないようにしましょう。
 発熱や激しい腹痛を伴う急性腹膜炎のあとや、開腹手術のあとは、腸の運動が弱くなり、便秘するのがふつうです。おならが、腸がふたたび動き始めたサインになります。
 常習性便秘は女性に多いですが、一部には原因がわかっているものもあります。たとえば、移動盲腸、ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)では、便がたまりやすい場所があり、腸の平滑筋の運動がわるいために便秘します。また、一般に内臓下垂症の人は便秘しやすい体質です。
 腸の通りがわるくなる病気、たとえば腸狭窄(きょうさく)、腸管癒着(ゆちゃく)、大腸がんのあるときには、便がよく出ません。腸狭窄は、結核などの炎症のほか、近くのがんが大きくなって、腸を圧迫したために内腔(ないくう)の縮小などが生じることにより起こります。
 生まれつきの病気では、子どもの便が出ないことで先天性鎖肛(さこう)に気づくことがあります。また、先天性肥厚性幽門狭窄症の可能性があります。
 そのほかに、緊張感や、環境の変化、食事の内容、運動不足によっても便秘します。

■便秘
症状病名そのほかの症状など
急性の便秘急性腹膜炎発熱、腹痛、吐き気・嘔吐、腹壁の緊張
腸閉塞(イレウス)下腹部痛、腹がはる、吐き気・嘔吐、冷や汗
慢性の便秘腸閉塞(イレウス)下腹部痛、腹がはる、吐き気・嘔吐、冷や汗
常習性便秘女性、運動不足
移動性盲腸腹痛
ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)腹部膨満
胃下垂症食後の胃のもたれ、食欲がない
大腸がん食欲不振、やせ、左・右下腹部のしこり、血便
先天性鎖肛生まれつき便が出ない
先天性肥厚性幽門狭窄症嘔吐
脳卒中意識障害、片側の顔面のまひ、吐き気・嘔吐
内分泌異常月経不順、恥毛の消失、むくみ


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹