便で分かる健康状態
~形や色の観察を(きのしたクリニック 木下和郎院長)~
便は健康のバロメーターの一つ。下痢や便秘を気にする人は多いが、便の形や色も健康状態を把握する重要な手掛かりになる。「トイレの後、何も意識せず流していた人も、きょうから自分の便を観察する習慣をつけ、毎日の健康管理に役立ててほしい」と、きのしたクリニック(神戸市)の木下和郎院長は話す。
〔3〕~〔5〕は正常便
◇軟らかいソーセージ状
便の形は摂取した飲食物の種類や量などの影響を受ける。便の形状の国際的な基準とされている「ブリストル便形状スケール」では、表面が滑らかで軟らかく、ソーセージ状かとぐろを巻いている状態の他、表面がひび割れたソーセージ状、はっきりとしたしわがある半固形状を正常便としている。
硬い便は食物繊維や水分などの不足、軟便と下痢便は油脂、香辛料、アルコールなどの取り過ぎなどが要因になる。正常便に整えるには食事内容を見直す他、規則正しい生活や適度な運動も大切だ。
見逃してはならないのが、形の変化。「数カ月前と比べて便が細くなった場合は、大腸がんなどの病気が隠れている可能性もあります」。こうした変化を見逃さないためにも、日ごろの便の観察が大切だ。また、排便回数が変化したり、「便秘なのに出てくる便は軟便」といった症状が続いたりするときも、消化器系の病気を疑って内科や消化器内科を受診する。
◇黒や白は病気が原因かも
便の色は茶色から黄土色にかけてが理想とされるが、あくまで目安だ。「牛乳の飲み過ぎや下剤の使用では黄色っぽく、イカ墨料理を食べたあとや鉄剤などの服用で黒っぽくなります」
気を付けたいのは、何らかの病気が影響しているケースだ。黒い便のなかでも「タール便」と呼ばれるドロドロした便なら、上部消化管(胃や十二指腸)からの出血が、赤い便や血の付いた便では下部消化管(小腸や大腸)や肛門からの出血が疑われる。出血の原因はがん、ポリープ、潰瘍、炎症、痔疾(じしつ)などで、抗生物質や痛み止めなどの薬の服用がきっかけで起こることもある。また、白っぽい便が何日も続くときは、何らかの病気によって胆汁(肝臓で作られる消化液)の通り道である胆管が詰まっている可能性がある。
便の色の変化に気付き、速やかに受診すれば病気の早期発見の一助になる。ただし、初期の大腸がんなど、目で見るだけでは分からないこともある。木下院長は、「日々の便の観察に加えて、がん検診を含めた定期的な健診も忘れず受けてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/01/02 05:00)
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