治療・予防

透析患者の災害への備え
~施設への移動手段確認(日本透析医会 山川智之副会長)~

 近年、日本各地で地震や台風、豪雨などの大規模災害が頻発し、災害時の医療体制の維持や備えが課題となっている。特に大量の水道水と電気を要する透析治療は、災害の影響を受けやすい治療の一つとされる。透析患者の災害対策について日本透析医会(東京都千代田区)の山川智之副会長に聞いた。

透析患者の地震被災時の対応

 ◇災害時の医療体制

 透析治療は、腎不全などで腎機能が著しく低下した場合に、その機能を人工的に置き換える臓器代替治療。血液透析と腹膜透析の2種類の方法がある。透析患者は2022年末時点で35万人弱。その約97%が、体内から取り出した血液を血液透析器(ダイアライザー)に通して老廃物や余分な水分を取り除く血液透析を受けている。専門の施設に週3回程度の通院が必要で(1回の治療時間は4~5時間)、この治療を受け続けないと命に関わる。

 断水時や停電時は血液透析が実施できない。施設や医療機器が損害を受ければなおさらだ。「そうした場合でも、日本透析医会では次の透析予定日の遅くても翌日までに治療を提供することを目標にしています」と山川副会長は話す。

 その中心的な役割を担うのが2000年から稼働する「日本透析医会災害時情報ネットワーク」だ。大規模災害(地震は震度6弱以上)が発生するといち早く透析施設の状況を把握、国や自治体ともリアルタイムで情報を共有し、必要に応じ施設単位で患者の受け入れ先を調整する。「自施設(かかりつけの透析施設)で透析ができないときは、他施設に依頼するというコンセンサスができています」

 ◇人任せにしない

 患者は、自施設と災害時の連絡の取り方を事前に確認し、常備薬やお薬手帳などはいつでも持ち出せるよう準備しておく。災害が起こったら速やかに自施設に連絡して指示を受ける。「連絡が取れなければ可能な範囲で自施設、あるいは近隣や避難先の施設に自力で向かってください」。一人での移動が難しい高齢者などは、家族や介護サービスなどにあらかじめ協力を頼んでおく。

 避難所に入所したら、自分が透析患者であることをスタッフなどに伝える。「人任せにせず、自分の身を守る積極的な行動を」。また、被災時はいつも以上に塩分、カリウム、水分の取り過ぎに注意が必要だが、長期に避難する状況では逆に栄養不足や脱水状態になりやすいという。非常食や飲料水はそうした点も考慮して常備する。

 災害には広域停電や津波、火山の噴火などもある。「想定通りにいくとは限りませんが、平時からいざというときにどう行動すべきか考えておく点が大切です」と山川副会長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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