治療・予防

薬嫌い克服に絵本
~大切さ知る契機に(東京薬科大学 吉田謙介講師)~

 子ども(3歳以上)が薬を飲むのを嫌がった経験があるという保護者は7割近くに上ることが、2015年に行われた「子どもの薬に関する調査」で分かっている。親子の服薬意識の向上を促す研究に取り組む東京薬科大学(東京都八王子市)医薬品安全管理学教室の吉田謙介講師は、食品に薬を混ぜて飲む一般的な対処法の問題点を指摘する。

「ベンゼンじまのポポロン」

 ◇混ぜると薬効へ影響も

 子どもが薬を嫌がる主な理由は、苦味やにおい、ざらつき、独特の甘さなど。特に粉薬が苦手な子どもは多く、アイスクリームやジュースなどに混ぜて薬を飲ませる保護者は少なくない。

 しかし、例えば酸性のオレンジジュースに混ぜると、苦味がより強くなる薬がある他、「何度も同じ食品に混ぜると、その食品自体が嫌いになる子もいます。混ぜることで効果に影響がある薬もあるため、可能な限りそのままの形で服用することが重要です」。

 吉田講師らは、薬を正しく飲む「服薬コンプライアンス」向上に対する新たなアプローチとして、服薬に関する心理的側面に着目。昨年、薬局運営企業のヤナリ(神奈川県相模原市)が展開するまいにち薬局との共同研究を実施し、絵本を用いて親子の意識の変化を調べて結果を発表した。

 3~6歳の子どもとその保護者23組を対象にした調査では、絵本の読み聞かせ前後で、服薬に対する困難を感じる保護者の割合が78.3%から34.7%に減少。64.3%の保護者が絵本を通じて薬を正しく服用する重要性を実感したと回答した。

 ◇絵本好きになり効果

 使用した絵本は、薬局と薬剤師が作成した「ベンゼンじまのポポロン」。主人公のウサギのポポロンが病気になった母親を助けるため薬をもらう冒険に出るという内容で、約40人の薬剤師が作成に加わり、工夫を重ねた。「絵本は繰り返し音読される可能性が高いため、絵本を継続して読むことが、親子の正しい服薬理解に効果的だと考えました」

 研究結果で吉田講師が特に注目したのは、絵本や絵本に登場するキャラクターを好きになった子どもほど、自ら薬を積極的に飲むようになった点。「スポーツと同様に、好きという前向きな感情が服薬の継続に好影響を与えた可能性があります」。今後は絵本の認知度をさらに高め、誰もが気軽に手に取れるよう、すべての薬局に1冊ずつ常備できる環境づくりを目指すという。

 子どもに必要な薬を飲ませるためには、無理強いは禁物だ。「混ぜてよい食品は薬によって異なるので、お困りのときは、薬の専門家である薬剤師に気軽に相談ください」と吉田講師は助言している。絵本はウェブサイトで購入できる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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