治療・予防

持久力高いほど脳活動が活発
~高齢者、多くの部位働かせる(明治安田厚生事業団 兵頭和樹研究員)~

 会話や計算などの作業をする際に必要な情報を一時的に記憶し、それを用いて物事を実行する作業記憶能力は生活する上で重要だ。明治安田厚生事業団体力医学研究所(東京都八王子市)の兵頭和樹研究員らは、持久力が高い高齢者ほど同能力にも優れるという脳内メカニズムを確認した。

持久力と作業記憶能力との関連

 ◇生活に必須の脳機能

 「作業記憶能力は、会話、学習、暗算、料理など、さまざまな行動を実行するときに必須の脳機能です」。自動車運転で例えると、歩行者や信号などの状況を記憶しながらハンドルやブレーキを操作することに当たる。

 「個人差はありますが、作業記憶能力は加齢に伴って低下します。認知症などで著しく低下した場合は、自立した生活が難しくなります」

 ただし、ウオーキングやジョギング、水泳など長時間一定の強度の運動を続けられる持久力「有酸素能力」が高い高齢者は、作業記憶能力も比較的高く保てることが報告されている。「ただ、そのメカニズムは解明されていません」

 ◇多くの部位が活発化

 作業記憶能力を使う時は、脳の前頭前野と呼ばれる領域の活動が活発化する。活発になる部位は若い人では限定されているが、高齢者では広範囲にわたるとされる。

 兵頭研究員らは、局所的な脳血流の変化を測定できる「近赤外光脳機能イメージング装置」を用い、作業記憶能力テスト中の脳活動を観察。高齢者(65~74歳)47人と若年成人(18~24歳)49人で比較した上、高齢者の持久力との関係を検討した。

 その結果、高齢者は若年成人より作業記憶能力が低かったが、テスト中に前頭前野の多くの部位が活動していることが分かった。広範囲での活発化は、有酸素能力が高い高齢者ほど顕著であることも確認された。

 高齢者は加齢による前頭前野の機能低下を補うために、多くの部位を代償的に動員することで認知機能を保とうとしていると考えられている。兵藤研究員は「有酸素能力の高い高齢者はこの『代償的脳活動』が活発であるため、作業記憶能力が優れていることが示されました。持久力を高めるためには、無理のない強度で楽しく、長く続けられるウオーキングなどをお勧めします」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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