治療・予防 2025/04/09 05:00
痛みは専門医に相談
~ペインクリニック(湘南藤沢徳洲会病院 木村信康主任部長)~
皮膚が急に赤く腫れ上がったり、肌がガサガサして、ふけのようなものが剥がれ始めたりしたら、どうするか。これらは「乾癬(かんせん)」の特徴的な症状だが、発症初期は体のごく一部に限られることもあり、早期の診断は難しい場合がある。発症早期に一般の内科や皮膚科を受診しても「なかなか治らない湿疹」などと診断されてしまい、症状が進行するまで診断が遅れる例もある。
肘にできた乾癬の状態(アムジェン提供)
◇まずは皮膚科専門医の診察を
自治医科大学で乾癬の専門診療を続ける一方で、地域で開業しながら患者会の支援にも携わる菅井順一・菅井皮膚科パークサイドクリニック院長は「乾癬というと、皮膚に症状が広がり、関節症状が出る場合などでは大学病院で専門医の治療を受けなければいけないというイメージを持つ皮膚科医は少なくない」と指摘。その上で「早期の診断と治療開始が症状の進行を食い止められることにつながる場合もあり、正しい診断と方針を決定することが重要だ」と強調する。
乾癬は免疫異常などによって起きる皮膚疾患で、異常増殖した皮膚細胞が全身からふけのように出るのが一般的な症状だ。しかし、実際の病態は多様で、身体のごく一部に発疹(ほっしん)が出て終わることもあれば、関節の変形など重い障害を引き起こすこともある。また、日本の患者数は約40万~50万人と推定され、患者数も決して多くはないため、一般的に日本での認知度が少ない疾患でもある。
このため、菅井医師は「まずは皮膚科の専門医による診断と治療が必要だ」と考え、重症例では大学病院と地域の皮膚科医の間でネットワークを組み、「関節症状も含めた乾癬の疑いのある患者」と「乾癬と診断された患者」の相互紹介(病診連携)の促進に尽力しているという。乾癬の治療は患部への塗り薬から内服薬、免疫制御のための注射薬、紫外線を皮膚に照射する光線療法までさまざまな選択肢がある。患者は、それぞれの症状の程度により必要な治療やその評価を対応可能な医療機関で受ける一方、重症例でも症状が落ち着いてきた場合には長期間の療養になるため、定期的な診察は受け入れ態勢がある身近なクリニックで受けることができる。
菅井順一医師
◇適切な治療で支障ない日常生活
菅井医師によれば、治療技術の進歩に伴い、病状に応じた適切な治療を受ければ、症状を最低限に抑えて日常生活を支障なく送ることも難しくはないところまで来ているという。
ただし、病状がどの程度で、どのレベルの治療が必要なのか、日常生活の注意点などについて、患者には理解が難しい。また、一線の皮膚科開業医では治療の種類によって、十分な治療ができない場合もあるのが実情だ。患者自身でも病気についての情報を集める必要がある。
◇メーカーも啓発に注力
一方、乾癬の治療薬を製造する「アムジェン株式会社」(本社東京)は、啓発用ホームページ「乾癬パートナーズ」を開設し、情報発信を行っている。ホームページでは、乾癬の発症のメカニズムや治療法、症状の多彩性などを紹介。自身も治療経験のあるフリーアナウンサーの高島彩さんをアンバサダーに迎え、疾患啓発活動を行っている。同社の担当者は「(症状の)外見を気にする患者が多い中でも、高島さんのように他人に見られる仕事をしている人もいる。引きこもりになりがちな患者の皆さんにぜひ知ってもらいたい」と話している。(喜多壮太郎)
(2025/04/04 05:00)
【関連記事】治療・予防 2025/04/09 05:00
痛みは専門医に相談
~ペインクリニック(湘南藤沢徳洲会病院 木村信康主任部長)~
治療・予防 2025/04/08 05:00
大腸がん、進歩する薬物療法
~切除不能ながんでも予後改善~
治療・予防 2025/04/03 05:00
妊娠糖尿病を正しく診断
~糖負荷試験が有用(神戸大学医学部付属病院 谷村憲司特命教授)~