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花粉で肌が荒れる「花粉皮膚炎」
~まぶたは悪化しやすく~ 【第10回】

 花粉皮膚炎とは、花粉に触れた皮膚が炎症を起こす病気です。かゆみや赤み、ブツブツや腫れなどが出ます。多くは顔やまぶた、首など、花粉が触れやすい露出部に症状が表れます。中でも、皮膚が極めて薄く、敏感な上まぶたは症状がひどくなることがあります。

 春や秋の花粉症のシーズン入りとともに発症し、その時期が終わると消えてしまいます。皮膚の炎症と同時に、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目と鼻のかゆみといった花粉症の症状を生じることが多くなっています。

まぶたや鼻などが赤く、腫れぼったくなっている

まぶたや鼻などが赤く、腫れぼったくなっている

 ◇原因

 もともと皮膚にはバリアー機能といって、外部からの異物である花粉やほこり、細菌、ウイルスなどの侵入を防ぐと同時に、内部からの水分の蒸発を防ぐ働きが備わっています。しかし、乾燥などでバリアー機能が低下すると、花粉成分が侵入してきてアレルギー反応が生じてしまうため、皮膚に花粉が付着すると皮膚炎が起きます。

 特に、アトピー性皮膚炎の方はアレルギー反応が強く、より強い症状が生じる傾向にあります。また、アトピー性皮膚炎の患者さんの30%がスギ花粉により皮膚の症状が悪化するという報告もあります。

 花粉皮膚炎は原因となる花粉によって症状が出やすい時期があり、春はスギやヒノキ、北海道ではシラカンバ(シラカバ)など、秋はブタクサ、ヨモギなどの花粉に触れることで誘発されます。

 ◇症状

 症状が出やすいのは花粉に直接触れる箇所で、露出部位である目・首の周り、顔などです。特にまぶた(眼瞼=がんけん)には強い症状が出がちです。

 かぶれなどと違って、初めは一見、じんましんのように皮膚が腫れぼったくなり、その後、赤くなったり、ザラザラしたり、ブツブツが出たりします。かゆみも伴い、かくと皮膚の状態がさらに悪化する場合があります。症状が長引くと、赤みがだんだんと茶色になり、色素沈着が残ってしまうこともあります。

 ◇予防

 予防策は①花粉をできるだけ皮膚に付着させない②付着した花粉を早く除去する③皮膚のバリアー機能を整える―などです。

 外出時は眼鏡、マスク、帽子、マフラーなどで顔や頭をなるべく覆い、花粉が皮膚に付着しないようにします。外出後は、使用したマスクや帽子、マフラーなどをまめに交換したり洗濯したりしましょう。花粉の飛散が多い日には外出を控えることも大切です。

 また、飛散が多い日に洗濯物を屋外に干すと花粉が付着し、それが皮膚に触れて皮膚炎を起こすこともあるので、乾燥機の使用や屋内干しをお勧めします。

 帰宅したら早めにシャワーを浴びて、付着した花粉を洗い流しましょう。すぐにシャワーが浴びられない場合は服を着替え、洗顔だけでも先に行いましょう。洗顔時は強くこすらず、たっぷりの泡を使用して優しくなでて洗い、ぬるま湯でしっかり流しましょう。その後は保湿も忘れないようにしましょう。

 バリアー機能を整えると、花粉の侵入を最小限にできます。洗顔後には化粧水だけでなく、乳液やクリームも併用しましょう。スキンケア製品にも抗炎症作用のある成分が含まれているものがあります。低刺激性で保湿作用が強く、炎症を抑えてくれる成分に注目して選ぶのもよいでしょう。バリアー機能を整え、炎症のない皮膚を保つように心掛けます。

 ◇治療

 花粉皮膚炎を根本的に治す方法は確立されていないため、対症療法が中心となります。

 治療では、かゆみや皮膚の炎症を抑えるために、抗ヒスタミン薬(内服)や皮膚の状態に合った強さのステロイド軟こう(外用)などが使用されます。アトピー性皮膚炎の治療薬であるタクロリムス軟こうが使われることもあります。悪化すると治るのに時間がかかってしまいますので、症状が出たらすぐに皮膚科を受診しましょう。(了)


木村有太子(きむら・うたこ)
 医学博士、順天堂大学医学部皮膚科学講座講師(非常勤)。
 2003年獨協医科大卒。同年順天堂大医学部附属順天堂医院内科臨床研修医、07年同大浦安病院皮膚科助手、13年同准教授、16年独ミュンスター大病院皮膚科留学。21年より現職。
 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本美容皮膚科学会理事、日本医真菌学会評議員、日本レーザー医学会評議員。

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