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本来なら軽症で済んだはずの感染症が、薬が効かず重症化するケースが世界中で増えている。背景には、抗菌薬への抵抗力を備えた「耐性菌」の拡大がある。国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)感染症科の庄司健介医師は「いつかあらゆる薬が効かなくなって、感染症で多くの人が命を落とすことにもなりかねません」と危機感を募らせる。
抗菌薬が効かない耐性菌が拡大
▽増える一方の耐性菌
感染症を引き起こす細菌を殺したり、増殖を抑えたりする抗菌薬が効かなくなると、治療が長引くだけでなく、重症化を招くこともある。薬が効かなくなるのは、抗菌薬にさらされた細菌が薬に抵抗できる仕組みを自ら作り出し、生き延びようとするからだ。これまでも抗菌薬が開発されるたび新たな耐性菌が表れるという「いたちごっこ」が繰り返されてきた。
最近は抗菌薬が安易に使われるようになって、耐性菌がますます増え、薬の開発が追い付かなくなってきている。「このままでは感染症を治療できる薬がなくなってしまいます。2050年には感染症ががんを抜いて世界の死因第一位になると言われるほど、事態は深刻です」と庄司医師。
▽安易な使用は厳禁
畜産の現場でも抗菌薬が大量に使われている。これによって動物の体内に耐性菌が作られ、その食肉を人が口にすることで、耐性菌を保菌してしまう可能性がある。庄司医師は「こうなると医療だけで解決できるレベルではありません。耐性菌の問題は、広く社会全体で取り組んでいくべきです」と強調する。
直ちに取り組むべきことは、抗菌薬を必要のないケースにまで使うことはせず、「薬を正しく用いる」という当たり前のことを徹底することだ。「誤った使用法で特に多いのは風邪です。実際には原因のほとんどがウイルスで抗菌薬は効果がありません」
ただ、いったん処方された抗菌薬を途中でやめてしまうのも禁物だ。中途半端に体内に菌が生き残り、それが新たな耐性菌を生み出すことにつながりかねない。抗菌薬を使う場合は、処方された薬を最後まで飲み切り、しっかり効かせることが重要だという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/01/05 06:00)
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