治療・予防

新米パパも心身に不調
夫婦で乗り切る「パタニティーブルー」

 育児に積極的な父親が増え、「イクメン」という言葉も一般的になってきた。その一方で、うつ的な症状に悩まされる父親もいる。子どもの誕生直後に父親を襲う「パタニティーブルー」と呼ばれる症状について大阪青山大学(大阪府箕面市)健康科学部看護学科の板東正己講師に聞いた。

夫婦2人の時間を持つことが大切

 ▽父親に起こる変化

 女性は、出産前後でホルモンバランスが急激に変化し、育児に伴う忙しさや生活環境の変化なども加わって産後うつになることがある。同じように男性も、わが子の誕生を機に心理的動揺が起こりやすくなる。板東講師は「赤ん坊が生まれて3カ月ほどの間に父親に起こる心身の不調を『パタニティーブルー』と呼びます」と説明する。

 主な症状は、寝付きが悪くなる、眠れない、頭痛、肩凝り、感情の起伏が激しくなる、気分が落ち込む―などだ。国立成育医療研究センターの調査によると、出産3カ月までに父親の16.7%がうつ傾向を示すという。

 原因としては、父親になる責任や家計を支える重圧によるストレスが挙げられる。そこに、慣れない育児や家事の負担が加わり、心の余裕が奪われるという。妻との関係の変化も大きく、妻の愛情が子どもに向いてしまう、2人で過ごす時間がほとんどないといったことが拍車をかける。

 父親の中には当事者意識が薄く、妻を助けているという気持ちで育児に参加している人もいて、妻に「やり方が違う」と否定されてばかりだと欲求不満を感じやすい。責任感が強く完璧主義である人が、仕事に逃避して家庭から遠ざかってしまうケースもあるようだ。

 ▽夫婦関係を立て直し

 こうした事態を招かないためには、子どもの誕生前から父親になる心構えを持つことが大切だ。病院や自治体が行う産前教室などに、夫婦で参加してみるのも一つの方法だという。

 うつ症状を治療する上では、夫婦の関係を取り戻すことが重要になる。板東講師は「夫婦2人の時間をつくることで、夫のストレスや重圧が軽減するケースは少なくありません」と指摘。「夫婦のコミュニケーションを大切にし、お互いにできることをするという気持ちでこの時期を乗り切ってほしい」としている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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