こちら診察室 見過ごしたくない「#育児あるある」
つらそうな子どもにどう接する?
~コロナで傷ついた心との向き合い方―大人編~ 【第6回】
2020年の冬から始まった新型コロナウイルス禍で、私たちは多くの変化を求められました。先行きが予測しづらい状況の連続で、いつもと違う行動や反応をした方も多かったのではないでしょうか。そして今、コロナが5類となって感染対策などが解除され、社会の機能もコロナ前に近づいています。このような生活様式の変化の中、親は子どものことを第一に考え、正しい情報を得て行動するために、ずっと神経を張って生活してきたのではないでしょうか。
コロナ禍で、私たちは従来以上に「ストレス」という言葉に関心を寄せ、対応しようとしてきました。あまり関心を持っていなかった方もいたかもしれませんが、実社会ではストレスが日々存在しています。これからも自信を持って、かけがえのない子どもと共に自分らしい生活を維持していくために、いま一度このストレスについて確認する機会を持ち、私たち大人ができることを一緒に考えましょう。
子どもの気持ちに寄り添い、安心感を与えよう
◇ストレスを和らげる
1. 症状・反応を認識
言葉でストレスを表現しにくい子どもたちは、度重なる腹痛や頭痛、皮膚をかきむしる、睡眠や食欲の変化といった体の症状や、そわそわして落ち着きがなくなる、自分を傷つけたり、ものを壊したりするなど行動面の変化でSOSを訴えます。こうした症状・反応を理解しておけば、子どもに対して努力不足と決め付けたり、強く否定・叱責したりするという行動をコントロールできるようになります。
2. 安心を与え(Reassure them)、ルーティンを大切に(Routines)
子どもに「親がそばにいること、守られていること」を伝えた上で、普段通りの生活を心掛けましょう。夕食・就寝前の読み聞かせ、ちょっとしたお楽しみタイムなど家庭の習慣を大切にしましょう。もちろん、運動や水分補給、十分な換気の下での深呼吸も忘れずに。何らかの理由で環境が変わり、普段通りにできなくなった場合は、リズムをつくるような新しい日課を考えてみましょう。
何かしんどいことが周りで起きたとき、私たち大人は子どもに過度な負担を与えないよう情報を囲い込みがちです。子どもなりに理解できるよう手助けすれば、子どもの不安が拡大するのを防げます。まず、正しい情報をごまかさず、その子の年齢に合った言葉で、一度に一つのポイントに絞って、目に見える形(イラストや動画など)で伝えましょう。
3. 互いを大事に(Empower them)
大変なときこそ、思いやりや地域について一緒に考えるチャンスです。最前線で活動している多くの人たちに感謝したり、寄付したり、身近な高齢者の健康を気遣ったりする機会をつくりましょう。このような時期は考え方に個人差が生じます。考え方や表現の違いなどで友達を批判したり、仲間外れにしたりしないように話し合う時間を持てるとよいですね。
4. まず大人が深呼吸(Maintain your own calm)
子どもは大人をよく見ています。まずは、自分をいたわることが子どものストレス軽減につながります。子ども自身でコントロールできることがあるという認識は不安や緊張の緩和につながります。
5. 人との絆を大切に
孤独は心の不具合を悪化させます。SNSなども普及しました。ぜひ、可能な方法を使って、人とのつながりを維持してください。
6. 感情の調整を手助け(Manage their emotions)
子ども自身が一連の出来事をどう感じているか、どんな影響を受けているかについて質問してみましょう。正しい答えが見つからなくても大丈夫です。
どのように話を聞くか戸惑ったり、かえって緊張してしまったりする方がいるかもしれません。「あのときはどんな気持ちだった?」などと一緒に思い出す形で導くようにし、どんな気持ちでもふたをせずに話してよいことを伝えてください。子どもによっては絵を描きながら、あるいは風呂に入りながらでも構いません。
子どもが「つらい」「しんどい」など、ネガティブな感情を口にしてきたときが大きなチャンスです。言葉がどんなにつたなくても、「そうか、つらかったんだね」「しんどかったんだね」「よく言葉で教えてくれたね」「よく頑張ってきたね」「上手に伝えられているよ」「教えてくれてありがとう」「一緒に考えようね」など、否定せずに受け止めてください。子どもの気持ちに添う言葉を発すれば、「こんなにしんどくても、ここにいていいんだ」「分かってくれる大人がいるんだ」という、大きな心の安心につながります。子どもなりの頑張りを認め、ねぎらう言葉を大切にしたいですね。
7. 共に学ぶ(Educate them)
子どもと一緒に、手洗いやせきエチケット、ストレス発散などについて学ぶ良い機会です。ワクチンやウイルスに関して知ろうとするのは、子どもが科学に興味を持つきっかけになるかもしれません。差別やいじめの未然防止、多様性の尊重など、人権意識を高める話し合いのチャンスかもしれません。
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(2023/11/13 05:00)
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