やせ 家庭の医学

 成人では、ふとっているよりもやせているほうが生活習慣病になりにくいのですが、1カ月に体重の5%以上を超えるペースで急にやせてくるのはよいことではありません。からだが消費する熱量に対して、必要なだけのエネルギーが与えられないとやせます。絶食や極端な減食では当然ですが、かぜのために食欲がないときや、下痢や嘔吐(おうと)がある場合にも、必要な栄養素がとれません。また、高熱や、極端に激しい労働などで、エネルギーを使いすぎても急にやせます。
 あきらかな理由なく徐々にやせる場合には、もっと重大な病気を疑う必要があります。中年以降では、まず、がんを調べてもらうべきでしょう。糖尿病、胃や肝臓の病気などでも体重が減ります。結核などの慢性の感染症では、体重減少だけがおもな症状のこともあります。バセドウ病でも、代謝が激しいためにやせ、肌が汗ばみ、手足がふるえる、目が光って大きく見える、動悸(どうき)がするなどの症状がみられます。尿崩(にょうほう)症や、神経性食欲不振症などでもやせます。
 むかしからやせていて、ほかに異常がない場合は、健康であり心配ありません。

■やせ
症状病名そのほかの症状など
急にやせる発熱性疾患汗が多い
下痢嘔吐脱水
ゆっくり徐々にやせるがんむくみ、だるい、食欲低下
糖尿病口渇、尿の回数や量が多い、尿の甘いにおい、夜間尿、全身倦怠感
肝硬変黄疸、腹水、出血傾向、息切れ、吐血、食欲不振、疲れ
結核微熱、せき
バセドウ病動悸、甲状腺のはれ、眼球突出、多汗
中枢性尿崩症多尿、口渇、汗が少ない
神経性食欲不振症若年女性、無月経


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹