こちら診察室 見過ごしたくない「#育児あるある」

「ありのままの気持ち、受け止めたい」
~病気の子どもと家族に寄り添う―看護師~ 【第8回(最終回)】

 病気と常に隣り合わせで、不安と心配で胸がいっぱい―。そんな子どもたちと家族がどうしたら安心して過ごせるか、治療に臨めるかに思いを巡らせているのが看護師たちだ。国立成育医療研究センター(東京)で患者らに寄り添う彼女たちに、胸の内を語ってもらった。難病の子どもを支援するNPO法人の関係者も話に加わった。

 〔参加者〕
 国立成育医療研究センター小児病棟 看護師長 鳥井瞳さん
 同センター外来 副看護師長(糖尿病看護認定看護師)山田未歩子さん
 同センター小児病棟 副看護師長(精神看護専門看護師)江崎陽子さん
 NPO法人「難病のこども支援全国ネットワーク」専務理事 福島慎吾さん

アプリを通じ壁紙を撮影することで、イラストに関連したアニメ、クイズ、塗り絵などが楽しめる


 ◇人気キャラクターで病院内に明るさ

 ―病院の子どもたちが少しでも楽しい時間を過ごせるようにと6月、ウォルト・ディズニー・ジャパンなどがミッキーマウスなど人気のキャラクターが描かれた壁紙やミニシアター、病衣をプレゼントしてくれました。記念の式典では特別ゲストのミッキーが登場し、盛り上がりました。11月には壁紙にスマートフォンやタブレット端末をかざすと、物語のワンシーンのようにイラストが画面上で動きだし、かわいいアニメーションが楽しめるアプリのサービスも始まりました。影響などを感じますか?

 山田 採血室の前を通ると、みんな絵を見ています。長い待ち時間にディズニー番組が見られるのは助かります。

 江崎 普段はやりとりのない患者さん同士が、しゃべりながらミニシアターを見ている姿もあります。外来の待ち時間が「質のいい時間」になっていると感じます。

 鳥井 担当している脳神経外科の患者さんはMRIの検査がかなりの頻度で入っていますが、かわいい病衣を子どもたちに選ばせると「どれにする?」などと楽しそう。「好きなキャラクターの服に着替えて頑張ろう」という気持ちになってくれるのかなと思います。

 福島 米国ではこのようなプログラムをかなり昔からやっていて、ウォルト・ディズニーの日本法人が昨年から始めました。私たちNPOと組み、第1弾は神奈川県立こども医療センターでした。今回は第2弾で、導入プログラムは全5種です。病院という制約の多い環境の下、子どもたちはつらい気持ちになったり痛い思いをしたり、恐怖を感じたりしている状況下、病気のある子どもたちだけでなく、そのきょうだい、親たちに小さな喜びと特別な時間を提供し、みんなに力を与えてくれていると感じています。とても意義があると思います。

鳥井瞳さん

 ◇コロナ影響なお、面会制限に苦慮

 ―病気のお子さんと家族のケアは本当に大変です。日々の悩みや課題を感じていることはありますか?

 江崎 新型コロナウイルス禍以後は面会に制限を設けています。感染の心配から慎重にならざるを得ず、本当に難しいと思います。子どもやご家族の気持ちも分かるので、日々ジレンマを感じています。
 そんな中、ご家族との信頼関係の大切さをより感じます。面会にいらっしゃった時は患者さんの病状はもちろんですが、「朝ご飯はこんなメニューが好き」など、ささいなことですが伝えられるように努力しています。

 鳥井 コロナ前は24時間面会OKで、仕事が終わった夜中に子どもの寝顔を見に来るお父さんの姿もありました。「お子さんがすごく大事なんだな」と感じましたし、その場で話す二言三言で家庭の様子が垣間見えた気がしました。
 今はまだ面会制限があり、以前のようにはいきません。長期入院の子の、治療と治療の間の自宅への外泊もありません。外泊は好きな物を食べたり、きょうだいと過ごしたりするお楽しみの時間でした。それがかなわない今、「病院で過ごす時間の質を上げていかなくてはならない」と強く感じています。
 病棟管理の立場から考えると、看護師の人材育成も必要です。比較的若いスタッフ、コロナ禍の下で学生時代を過ごした新人たちは、いろいろな世代の人とのコミュニケーションに慣れていないことが多いと感じます。子どもたちに少しでも快適で安心な入院生活を送ってもらうにはスキルアップが必要だと考えています。

山田未歩子さん

 山田 難病、慢性疾患の患者さんの親は、子どもがつらくて大変な思いをしないように日々考えているものの、自身がその病気ではないので子どもと同じ経験をするのが難しいと思います。同時に、私たちも子どもたちの大変さをすべては実感できません。私はご家族に「なるべく病気になる前と同じように暮らせるようにしましょう」と伝えています。

 福島 病気があっても子どもは必ず成長・発達します。そのために必要なサポートをしたいと思っています。
 私は、自分の子どもが難病だったことがきっかけで今、こうした活動をしています。その中でいろいろな人と出会い、普通ではなかなか得難いとてもいい経験をしてきたと思うのです。
 家族が元気にならないと、子どもたちも元気になりません。親をサポートすることで、結果として子どもたちに元気になってもらうのが目的です。
 成育医療研究センターでも、同じような病気の経験者同士が支え合う「ピアサポート」の活動をさせてもらっています。重い物は一人で持つのではなく、みんなで持つと楽です。専門家だけではなく、親の会やピアサポーターの貴重な経験を生かして、両輪で支えていけばいいと思って活動しています。
 看護師さんたちはコロナの制約で大変な中、本当にいろいろなことを考え、とても丁寧にやってくださっています。

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