甲状腺の良性腫瘍(腺腫、嚢胞、腺腫様甲状腺腫)〔こうじょうせんのりょうせいしゅよう(せんしゅ、のうほう、せんしゅようこうじょうせんしゅ)〕

 甲状腺にはいろいろな良性腫瘍や悪性腫瘍(がん)が発生し、大きくなると甲状腺の一部に結節として外から触れることができます。甲状腺機能はほとんどの例で正常です。
 良性腫瘍では腺腫(アデノーマ)が代表的です。相当な大きさにならないかぎり症状はありません。診断は超音波(エコー)検査で可能です。がんとの鑑別が困難な場合には、針生検(注射針を腫瘍部に刺して細胞を取り、細胞の悪性度を顕微鏡で判定する)をおこないます。時に腺腫のなかに出血して痛んだり、内部に液体がたまって嚢腫(のうしゅ)を呈することがあります。腺腫の大部分は非機能性で、甲状腺ホルモンをつくることはありません。
 腺腫様甲状腺腫は腺腫とは異なり、同じような結節がたくさんでき、かなりの大きさになることがありますが、甲状腺機能は大部分で正常です。

[治療]
 腺腫や腺腫様甲状腺腫に対しては甲状腺ホルモンを投与すると、多少は小さくできますが消失させることはできません。腫瘍が大きく圧迫症状があったり、美容上問題があれば手術によって摘出します。
 嚢腫(腫瘍の内部に液体がたまっている状態)では、注射器で内部の液体を吸引すれば小さくなりますが、貯留をくり返す場合には嚢腫内にアルコールを注入して貯留を止めることができます。
 小さい腺腫は手術の必要はなく、経過を観察するだけで十分です。腺腫様甲状腺腫も圧迫症状がなければ観察のみで十分ですが、巨大な場合には摘出します。

(執筆・監修:東京女子医科大学 常務理事/名誉教授 肥塚 直美)
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