排尿トラブルに潜む場合も
~ぼうこうがん(弘前大医学部付属病院 畠山真吾教授)~
昨年12月に亡くなったフリーアナウンサーの小倉智昭さんの死因は、ぼうこうがんだった。弘前大医学部付属病院(青森県弘前市)泌尿器科の畠山真吾教授は「高齢の男性に多い」と話す。

ぼうこうの位置
◇男性60代から増加
ぼうこうがんになる人は年間2万3000人程度。人口10万人当たりの発症率は60代からピークの90代後半まで加齢とともに高まる。喫煙も大きなリスク因子だ。
早期には症状がないことが多い。あるとすれば、尿が近い、排尿後の痛み、残尿感、血尿だ。このようなトラブルは高齢者によくあるため、「年齢のせい」「そのうち良くなるだろう」と思い込み、受診の機会を逃すケースがある。
早期に発見して治療すれば、長期の生存が期待できる。畠山教授は「排尿で気になることがあれば、ためらわずに泌尿器科を受診してほしい」と呼び掛ける。
◇新たな技術の薬
早期がんの治療では、尿道から入れた内視鏡で見ながら電気メスで切除する。「切除時にがんがぼうこうの内部に散らばる可能性があるため、手術後2年間は3~4カ月に1回、検査を続けます」
がんの「性質」が悪い場合は、内視鏡による切除後、ぼうこう内に薬を注入することや、内視鏡下の治療を2回に分けて行うこともあるという。
がんが粘膜からその下の筋肉に入るほど深いが、まだ転移していない場合、ぼうこうを全て摘出する手術が選択肢となる。代わりを腸の一部で作ったり、腹部から尿を出すルートを作ったりする。
他の臓器に転移するなど、手術ができない場合の治療としては、2021年に薬剤「抗体薬物複合体」が導入された。当時の使用対象は、従来型の抗がん剤が効かなくなった患者だった。24年9月には手術不能ながんに対する最初の治療で、免疫療法と組み合わせて使えるようになり、生存期間が従来に比べ2倍に延びた。
この併用療法をさらに早期の段階に応用する開発も進んでいる。畠山教授は「多くの人が、ぼうこうの摘出を免れ、がんが治る時代が来るでしょう」と期待を寄せる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/05/26 05:00)
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