日本システム技術株式会社
~頭痛患者に対する処方パターンの検討~
当社と勝木 将人先生(糸魚川総合病院、諏訪赤十字病院 脳神経外科・頭痛外来)との間において実施中の「片頭痛と、片頭痛医薬品および薬物乱用頭痛の関連性」に関する共同研究成果の一部として、「日本の成人頭痛患者に対する処方パターンの検討」が、国際頭痛学会学術雑誌Cephalalgia(インパクトファクター6.1)に掲載されました。また「日本における6-17歳の頭痛患者に対する処方パターンの検討」が、医学雑誌Life(インパクトファクター3.2)に掲載されました。
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背景
頭痛は日本人の4人に1人が保有していると言われ、長期間にわたって医療費が伴う疾病となっております。その中でも片頭痛は日本人全体での有病率は8.4%とされており、多くの人が悩まされています。一方で、近年では片頭痛の特効薬となる急性期治療薬や予防治療薬の開発も進んでいますが、急性期治療薬の過剰摂取による薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の発生等において問題視されるケースもございます。
この状況に際して、当社は勝木 将人先生協力のもと、当社メディカルビッグデータ「REZULT」を活用した、「片頭痛と、片頭痛医薬品および薬物乱用頭痛の関連性」に関する共同研究を2022年10月より実施しております。
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https://www.jast.jp/cms/wp-content/uploads/2022/10/ir_notice20221018.pdf 参照)
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日本の成人頭痛患者に対する処方パターンの検討
題名 :Treatment patterns and characteristics of headache in patients in Japan: A retrospective cross-sectional and longitudinal analysis of health insurance claims data
著者 :Masahito Katsuki, Yasuhiko Matsumori, Taisuke Ichihara, Yuya Yamada, Shin Kawamura, Kenta Kashiwagi, Akihito Koh, Tetsuya Goto, Kazuma Kaneko, Naomichi Wada, Fuminori Yamagishi
掲載雑誌:Cephalalgia (
https://journals.sagepub.com/home/cep )
掲載日 :2024年1月9日
DOI :
https://doi.org/10.1177/03331024231226177
研究内容:
本研究では、レセプトで頭痛(R51およびG44)と病名が付与されている成人患者に対する処方パターンについて、横断的研究と、経時的変化を観察した縦断的研究の2つを行いました。医原性薬物乱用頭痛が否定できない処方(以下過剰処方)はトリプタンと複合鎮痛薬(30錠/90日以上)、鎮痛薬単剤(45錠/90日以上)としました。
横断的研究では、2020年のレセプトデータ(※)から、急性期治療薬の処方粒数が最大となる90日間を抽出し、過剰処方の割合を検討しました。急性期治療薬が処方されていた患者13,651患者のうち、単剤の鎮痛薬は12,297例(90.1%)に、トリプタンは1,710例(12.5%)に処方されており、全体の2,262例(16.6%)に過剰処方が認められました。1,200例(6.0%)は頭痛の予防治療薬が処方されていました。
縦断的研究では、2010年から2022年までのレセプトデータを用いて、初診時から2年間の処方パターンを追跡しました。頭痛初診から2年間追跡できた408,183患者のうち、2年間で過剰処方を1度でも経験した患者は37,617例(9.2%)でした。29,313例(7.2%)は2年間で予防治療薬の処方を経験していました。若年であること、初診から90日間に多くの急性期治療薬が出されていること、予防治療が早期に開始されていることが、2年間で過剰処方に陥りやすい危険因子であることがわかりました。
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日本における6-17歳の頭痛患者に対する処方パターンの検討
題名 :Treatment patterns for and characteristics of headache in children and adolescents aged 6-17 years in Japan: A retrospective cross-sectional and longitudinal analysis of health insurance claims data
著者 :Masahito Katsuki, Yasuhiko Matsumori, Taisuke Ichihara, Yuya Yamada, Shin Kawamura, Kenta Kashiwagi, Akihito Koh, Tetsuya Goto, Kazuma Kaneko, Naomichi Wada, Fuminori Yamagishi
掲載雑誌:Life (
https://www.mdpi.com/journal/life )
掲載日 :2024年1月8日
DOI :
https://doi.org/10.3390/life14010096
研究内容:
上記と同様の研究を、6-17歳の患者に対して行いました。横断的研究では、2020年のレセプトデータから、急性期治療薬の処方粒数が最大となる90日間を抽出し、トリプタンの過剰処方の割合を検討しました。急性期治療薬が処方されていた患者1,524患者のうち、トリプタンは96例(6.3%)に処方されており、そのうち11例(11.5%)に過剰処方が認められました。93例(6.1%)は頭痛の予防治療薬が処方されていました。
縦断的研究では、2010年から2022年までのレセプトデータを用いて、初診時から2年間の処方パターンを追跡しました。頭痛初診から2年間追跡できた80,756患者のうち、2年間でトリプタン過剰処方を1度でも経験した患者は44例(0.05%)でした。3,408例(4.2%)は2年間で予防治療薬の処方を経験していました。
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今後の展望
本研究により、成人においても小児においても、頭痛患者に対して過剰処方が行われている可能性が示唆されました。今後患者も医療者も薬物乱用頭痛のリスクを正しく知り、適切な急性期治療薬の使用と処方が望まれます。今後、医原性薬物乱用頭痛を啓発するために、保険者と患者や医療機関に向けた疾患啓発の取り組みを検討する予定です。
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メディカルデータ「REZULT」の詳細は以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/rezult_data/
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未来共創Labについて
当社未来共創Labは医療ビッグデータ事業として、医療現場や各種保険者様が抱える課題の解決へ向けて、メディカルビッグデータ(レセプトデータ、健康診断データ等)を利用した医療DXを推進しております。当社データの価値を高め、お客様の課題を解決するための可能性を広げるべく、今後も本研究における分析を進めてまいります。
また未来共創Labでは、SDGs(Sustainable Development Goals)目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」へ向けて、メディカルビッグデータを利活用した健康増進を目的とし、産学連携での商材開発・共同研究を実施しております。
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共同研究者について
勝木将人(糸魚川総合病院脳神経外科、諏訪赤十字病院 脳神経外科・頭痛外来)
<略歴>
2016年 東北大学医学部医学科卒業
2021年 糸魚川総合病院脳神経外科 医長
2023年 諏訪赤十字病院 脳神経外科・頭痛外来
国際頭痛学会、日本頭痛学会、日本脳神経外科学会、日本メディカルAI学会等に所属。脳卒中や頭痛診療の傍ら、日本の経済復興・医療過疎地域に関する問題を解決するため、公衆衛生活動や医療AIの研究に尽力している。
※レセプトデータについて
レセプトとは、患者が受けた保険診療について、医療機関が保険者(市町村や健康保険組合)に請求する医療報酬の明細書のことです。医科・歯科の場合には診療報酬明細書、保険薬局における調剤の場合には調剤報酬明細書、訪問看護の場合には訪問看護診療費明細書とも言います。1患者、1か月、1医療機関あたりで1件のレセプトにまとめられており、患者が医療機関を受診した原因となる疾病情報や、医療費を支払っている情報等を保持しています。当社ではこれらの各種情報をデータベース化して保持しています。
【本件に関するお問い合わせ先】
日本システム技術株式会社 未来共創Lab
お問い合わせ:
https://www.jastlab.jast.jp/contact/
未来共創Labサイト:
https://www.jastlab.jast.jp/
▼日本システム技術株式会社 企業情報
https://www.jast.jp/
以上
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(2024/01/17 16:13)
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