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口腔外科で扱う疾患は? 【第1回】
歯科口腔(こうくう)外科(以下、口腔外科)は、歯や歯ぐきのほか、唇や頬、口蓋、舌なども含めた口の中全体のさまざまな疾患や外傷を扱います。歯科医療と外科的治療が融合しており、患者にとってどのような問題があり、それに対する治療法に何があるのかを判断し、包括的な対応をします。一般的なイメージでは、親知らずの抜歯や口腔がんの治療、歯ぐきの手術、インプラント手術でしょうか。
◇幅広い守備範囲
口腔内の疾患や外傷を扱う
実際は、これらに加えて顎の骨折や口周りのけが、口腔粘膜疾患、顎(がく)関節疾患、口唇疾患、歯が原因の副鼻腔(びくう)炎、細菌感染による顎・顔の腫れ、唾液腺疾患、唇顎口蓋裂、三叉神経痛や舌咽神経痛などの神経疾患、口唇ヘルペスや顔面口腔の帯状疱疹(ほうしん)などのウィルス性疾患、リンパ節疾患、歯列矯正、口腔の良性腫瘍なども含まれ、守備範囲は幅広くなっています。
その他、全身疾患が口の中にも症状として現れることも多く、医科主治医と共同で治療に当たる場合もあります。口腔外科は、このように外科的な処置が必要なケースも含め、多くの疾患を扱います。
同じ病気やけがでも、口腔外科とは別の科が診察する場合もあります。「どの科を受診したらよいの?」と迷われることも多いでしょう。例を挙げれば、口の腫瘍(良性・悪性)は耳鼻科が、顎の骨折やけがは形成外科が、それぞれ治療に当たることもあります。
診断には、血液やレントゲン、CTスキャン、MRIなど各種検査が用いられ、正確な情報を基に治療方針が決定されます。これには外科手術のほか、薬物療法や放射線治療も含まれます。例えば、口腔がん治療には、外科的手術だけではなく、抗がん剤、術後リハビリテーションなどが考慮されます。顔面や頸部に傷口が及ぶケースも多く、傷口の修正手術が複数回になることもあり、特に精神面でのケアも重要となります。親知らずを抜く際には局所麻酔を使用し、患者の負担を軽減します。顎関節症に対しては、外科的手術だけでなくリハビリテーションも考慮されます。
ただ、医師は自分の専門外と判断すれば、的確な治療ができる診療科を紹介しますので、気になる症状があれば、まずは科を問わず受診していただくことが大切でしょう。
◇気軽に受診を
口腔外科というと大学病院など大きな病院を想像され、紹介状がないと受診できないと思われている方もいるでしょう。ただ、最近は口腔外科をメインとする個人開業医も増えてきましたので、気軽に受診を検討いただくとよろしいかと思います。
その際の受診の目安をお伝えします。病院やクリニックで標榜可能な(看板に書ける)診療科は、国の定めた医療広告ガイドラインで規制されています。
歯科で標榜可能な科目は歯科、歯科口腔外科、小児歯科、矯正歯科です。標榜は自由ですので、各学会の専門医の資格を取得していなくても看板を掲げることは自体は可能です。
口腔外科の診療を希望して受診される場合、最も分かりやすいのは「○○歯科口腔外科クリニック」などでしょう。口腔外科を前面に出していれば、専門としている所が多いです。ホームページで診療内容をチェックするか、直接電話して事前に症状や痛みの程度を詳しく伝えてから受診されることをお勧めします。
初めての受診時には、事前に自分の症状や病歴を整理しておくとよいでしょう。診察がスムーズに進み、医師とのコミュニケーションが円滑になります。服用中の薬やアレルギーについても正確に伝えることが大切です。
自分の症状や病歴を整理
口腔外科では治療後のフォローアップも重要です。手術後の経過観察や必要に応じた追加の治療を行い、患者の回復をしっかりサポートするため、歯科医師はこまやかな配慮も怠ってはいけません。患者側でも、痛みや腫れが続く場合は、すぐに医師に相談してください。
◇担当は歯科医師
ここで、口腔外科診療のライセンスについてお話しします。もちろん、歯科医師の国家資格があれば、口腔外科診療は可能です。一般開業医で日常的に行われている抜歯手術などは口腔外科処置になります。
大学病院であれば、歯学部付属の大学病院と医学部付属の大学病院(すべてではない)に口腔外科があります。歯学部付属病院の口腔外科は歯科医師、医学部付属病院の口腔外科は医師というわけではありません。どちらもほとんどが歯科医師です。中には医師・歯科医師のダブルライセンスを持つ先生もいますが少数です。ですので、口腔外科を担当するのはほとんどが歯科医師となります。
口腔外科では、口腔がんの治療・手術も歯科医師が扱っています。何か困ったことがあれば、ぜひ信頼できる歯科医師にご相談ください。口の健康を守るために適切なケアを受けることが大切です。(了)
角田智之(つのだ・ともゆき)
歯科医師・歯科医師臨床研修指導医・日本選択理論心理学会認定選択理論心理士。明海大学卒業後、日本大学医学部歯科口腔外科学教室、久留米大学医学部口腔外科学教室などを経て、2008年に福岡市で「つのだ歯科口腔クリニック」(現在は「つのだデンタルケアクリニック」)を開設した。
(2024/12/19 05:00)
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